2002年3月14日 悪化の一途をたどる情勢


イスラエルからのニュース
2002年3月14日

 イスラエルの情勢は、悪化の一途をたどっています。その中でも、いくつかの新しい動きについて、お知らせしたいと思います。


1.パレスティナのジャンヌ・ダルク

 1月27日に、パレスティナ人女性による自爆テロ事件が、エルサレムの中心街であり、大きなショックを与えました。その女性テロリストは、ナブルスにある、ア・ナジャ大学の学生、シナズ・アムリ[1]、20歳とのこと。しかし、学校側では、そのような学生は存在しないと否定しています。

 このテロ事件の後、彼女の物語が美化され、彼女はヒロインとして、祭り上げられました。その結果、多くのパレスティナ人の女性たちは、テロ行為をするために志願して、訓練を受けるようになり、その訓練の模様が、テレビのニュースにも流れていました。そして、実際に、ナイフを持った一人のパレスティナ人女性が、イスラエル兵士が守る検問所を襲った事件が起こり、さらには、未遂に終わりましたが、別の女性は爆弾を身につけて、イスラエルの区域で爆弾テロを試みました。このように、一人の女性の爆弾テロ事件が、ひとつの大きな新しいテロの波を引き起こすことになりました。


2.イスラエル国防軍のテロ対策

 毎日のように、何件ものテロ事件が起こり、多くの被害者が出るという状況で、イスラエル政府とイスラエル国防軍は、テロ対策に対して、さらに強硬な手段を講ずることになりました。二月の末から展開された、パレスティナ難民キャンプ、バラタ、ジェニン、トゥルカレムでのテロ掃討作戦、そして、その戦線は、さらに拡大され、ラマラにも及んでいます。この作戦を通して、パレスティナ側には、多くの死傷者が出ました。しかし、ここで出ているパレスティナ側の死傷者は、イスラエル側で出ている死傷者とは、内容を異にしています。それは、いくつかの例外を除いて、そこで死傷しているパレスティナ人は、イスラエル軍に対して、武器を持って立ち向かっている人たちです。しかし、その一方、イスラエル側で出ている多くの死傷者は、兵士を除いて、単に道を歩いていたり、車を運転していたり、喫茶店でコーヒーを飲んでいたり、あるいは祝いの席に出席していたり、何気ない日々の営みの中で、突然、恐ろしい惨劇が、襲い掛かってくるのです。

 また、難民キャンプやその他のパレスティナ自治区において、なされているイスラエル軍のテロ掃討作戦により、カサム・ロケットを含む、いくつもの武器弾薬工場が発見され、また、多くの武器弾薬が民家などからも押収され、たくさんのテロリストたちが逮捕されました。さらに、右の写真にもありますように、武器を不法に持ち込むための、エジプトとの国境を渡るトンネルなどが発見されています。そのようなことを通して、オスロ合意に反するパレスティナ側のあり方が、ますます明白になっています。


3.土曜の夜の悪夢

 三月九日の土曜の夜、テレビのニュース番組で、テルアビブよりも北に位置する海岸の町、ネタニヤで銃撃テロがあり、二人の死者と50人にも及ぶ負傷者が出るという、悲惨なニュースを見ていました。一つのホテルのパーティー会場で撮影されていた、ホームビデオには、次のような場面が、映し出されていました。屋外で、銃を乱射する銃声におびえ、泣き叫ぶ子供たちの姿、その子供たちに静かにするように呼びかける母親の姿、さらには、神に祈り、歌う人々の姿などが見られました。そして、その後、その銃を持ったテロリストは、そのホテルの中にも入り、銃を乱射したのです。

 そのような悲惨なニュースを見ている矢先に、大きな爆音を耳にしました。それは、私が住んでいるところから、徒歩で南に下って、5分ほどで行ける場所で起こった自爆テロでした。それは、アザという通りに面するところで、喫茶店やレストランが数多くあります。その自爆テロ事件があったのは、その中でも、最も人気のある喫茶店で、土曜の安息日明けに、多くの人が憩いを求めて、そこに集まっていました。また、その現場は、首相公邸から100mというところに位置していました。その自爆テロにより、11人の死者と50人以上の負傷者を数えました。

 しかし、その前の週の三月二日の土曜日の夜にも、自爆テロ事件がありました。そのときも、大きな爆音が聞こえ、その後、しばらくして、たくさんの救急車のサイレンの音を耳にしましたので、すぐにテレビをつけましたが、まもなくして番組が、ニュースに切り替わりました。そのニュースによると、ユダヤ教正統派の人たちが、多く住む地域でこの事件は起こりました。安息日明けに、たくさんの人が、道に出ており、そこに、爆弾を体に巻いたテロリストが、やって来て、自爆したのです。この自爆テロにより、二歳の幼児と十歳の子供を含む、9人の死者と57人の負傷者が出ました。

 まさに、土曜の夜の悪夢です。

 こちらでは、本当に、次から次とテロ事件が発生しています。今日、このニュースを書いている日にも、二件の銃乱射テロ事件が、テレビのニュースで報道されていました。

三宅弘之

--------------------------------------------------------------------------------

[1]  犯罪者であるので、尊称を使うことを避けました。


最新号に戻る

きよきよの部屋に戻る
HOME