イスラエル・ニュース
10月


1.シャナー・マトカー(甘い新年)?


  イスラエルでは、926日の夜からすでに新年を迎えた。 新年の挨拶として「よいお年を、そして、甘い新年を」と交わす。しかし、その喜ばしいときに突然の惨劇が襲うことになる。ヘブロン南西に位置するユダヤ人入植地、ネボホートにライフルと手榴弾を持ったパレスチナ人テロリストが侵入し、新年を祝うアブラハム家族のドアをたたいた。ドアが開かれたとたんにその男は、ライフルを発砲し、一人の男性と生後7ヶ月の幼女を殺害したのである。

 
また、このテロ事件に先立って、99日にもテルアビブ近郊とエルサレムで爆弾テロがあり、合わせて15名の死者と多くの負傷者が出た。

 こうしたテロを受けて、イスラエル政府は緊急会議を開き、アラファト氏の追放を賛成多数で閣議決定した。それは、氏がテロの放棄を拒否し続け、和平の妨げとなっていると結論したためである。

 しかし、その決定に対して、国連が緊急会議を開き、いつものように
1334で、アラファト氏追放に反対する決議が出された。しかし、パレスチナ側のテロに対して一切触れていない決議に対して、一方的であるとして、アメリカは拒否権を行使した。

 ある新聞の漫画で、サダム・フセインとオサマ・ビン・ラーデン、そして、アラファトが、一つの体につながって、それぞれの手は血にまみれている絵があった。フセインとビン・ラーデンがアラファトに「俺たちは同じことをしているのに、どうしておまえだけが、世界の支援を受けることができるんだ。」と問いかけていたのが印象的である。


2.パレスチナ自治政府の新首相

 アフムッド・アバス氏が、首相の座パレスチナにアフメッド・コーリア(通称:アブ・アラ)氏がその席に着くことになった。氏は、穏健派で1993年のオスロ合意に関する交渉にも関係していた。そして、イスラエルのハト派の議員たちとも親交を持っている人物である。しかし、アブ・アラ氏の政権は、実質的にはアラファト議長の傀儡政権でしかありえず、イスラエル側は、そうした政権との交渉には消極的である。


3.イスラエル空軍パイロットの軍務拒否

 もう一つの大きな話題として、イスラエル空軍に属する27名が、軍務を拒否する訴状に署名し提出したことである。それは、パレスティナ・テログループの指導者や幹部を狙っての暗殺に、住宅密集地でヘリコプターやジェット機を使ってミサイルを投下することに対する反対である。

 今までに幾度も、道義性に基づくイスラエル兵士による任務遂行拒否があったが、今回、イスラエル国防軍のエリートたちによる拒否ということで大きな反響を呼んでいる。

 しかし、この訴状が、軍に提出される前に報道機関に流されたという経路もあって、人道的ではなく、政治的な動機でなされたとの非難もあがっている。特に防衛庁のモファッズ長官は、怒りをあらわにして、次のように非難している「その手紙は、横柄で殊勝ぶった偽りであり、空軍で働く同僚を傷つけるものである。うわべは、高尚なモラルを示しているように見えるが、実際的には、不道徳であり、反社会的である。 彼らの手紙は、不法なテロリストたちを勇気づけるものであり、また、彼らに対する支援を引き起こすものとなる…」

 その訴状に署名したパイロットたちは、署名を撤回しない限りその任務を解かれ、空軍の他の職務に就くことになる。


4.ストライキ

 イスラエルでは、ゼネストは毎年恒例のように行われる。それは、ヒスタドルートという巨大な労働組合組織が君臨しているためである。空港や港湾、官公庁では、大混乱を呈している。特に、港の荷の積み下ろしができないために輸出入物品が棚上げ状態となり、青果物が時期を逸し腐敗する、あるいは家畜が、船内の粗悪な環境の中で放置されているという事態に陥っている。

 
また、出荷契約を守ることができないことから、海外における市場を失うという恐れもあり、二重三重の打撃を蒙るところも少なくない。

 このストライキは、更なる予算の削減と官僚組織の縮小に伴う、公務員の解雇、そして、国営企業の民営化、特に国営の港湾関連企業の改革に対して反対するものである。しかし、被害を蒙る業者の人たちが港に詰めかけ、そうしたストライキの即時撤回を求めるデモを行っている。

 空港でも、必要以上の質問や検査、あるいはのろのろとした働きのゆえに、大行列ができるといった有様で、大混乱に陥っている。

 ヒスタドルートは、ヨム・キプール(大贖罪日)以降にストライキをさらに強化する予定であるとほのめかしている。


5.ハイファでの自爆テロ事件

 土曜の客でにぎわうハイファのレストランで、自爆テロが起こった。そこは、ユダヤ人だけではなく、多くのアラブ人たちも利用するところで、初代レストラン経営者の孫に当たるニル・ヌリ氏は次のように驚きを語る、「このレストランは、共存のシンボルでこんなことが起こるとは夢にも思わなかった」。

 この自爆テロは、弁護士資格を取得するために学んでいたパレスチナ人女性によるもので、女性の自爆テロとしては、4人目である。

 この爆発で、3人の子供を含む19人の人々が犠牲となり、60人あまりの負傷者も出ている。また、その中にはアラブ人も含まれている。

 この自爆テロに対して、イスラエルは西岸地区、あるいはガザ地区でテロリスト掃討作戦を展開するとともにシリアのイスラム聖戦の軍事キャンプ施設を空爆した。それは、イスラム聖戦が犯行声明を出したためである。また、シリアのパレスチナテロ組織支援をけん制する意味もある。しかし、この空爆に対して、シリアは国連緊急安全保障会議を呼びかけ、イスラエルに対する非難決議を求めた。それに対して、イスラエルの大使、ダン・ギラーマン氏は次のように語る、「テロリストたちをかくまい、支援している国が、国連会議を招集している。それは、911日のアメリカへのテロ攻撃の後に、ビン・ラーデンが、アメリカを非難するために国連会議を招集しているのと同じだ」。

 また、この自爆テロによって、イスラエルがアラファト氏の追放に踏み出すのではないかとの恐れにより、パレスチナ自治政府では、緊急内閣を組閣し、厳戒態勢を敷いている。

三宅弘之
LCJE海外協力レポーター

(ハ・アーレツ、エルサレム・ポスト、イスラエル・トゥデイ、ICEJ、CNN、イスラエル テレビ・ラジオ ニュース等)


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