イスラエル・レポート

200311





1.アメリカ人が標的に

 2000年にアルアクサ暴動が始まって以来、初めてアメリカ人がテロの標的として狙われ、犠牲となった。一人のアメリカ人外交官と3人のアメリカ人の護衛を乗せた車が、パレスチナ人の支配地域をガザにむけて走行中、10Kgもの爆弾がワイヤーによる遠隔操作で起爆され、4人を乗せた車は、無残な残骸となった。また、3人の護衛はその爆発によって殺され、外交官は重傷を負った。

 現場には800人あまりのパレスチナ人の若者が集まり、「アラーは偉大である」と叫び気勢を上げていた。また、現場に駆けつけた外国人記者やアメリカの調査員たちに石を投げ、パレスチナ警察が銃で警報を放って、群集を散らすという始末であった。

 ハマスをはじめイスラム聖戦などの極右グループは、すぐに事件への関与を否定した。

 
その爆破事件の報告を受けてブッシュ大統領は、ロード・マップに求められているテロ組織の解体や不法な武器の押収などをパレスチナ側が早くに履行していたならばこのようなことは起こらなかったとパレスチナ自治政府の履行義務遅延を非難した。

 さらにアメリカは、犯人逮捕につながる情報提供者に対して5百万ドルの懸賞金を提供し、パレスチナ自治政府は、不快感をあらわにしている。


2.地下トンネル

 イスラエルとエジプトの国境地帯にたくさんの地下トンネルが掘られている。それは、武器・弾薬、人身をエジプトからパレスチナ側(パレスチナ人の区域)に運び込むためである。
 その国境地帯にあるパレスチナ人の町ラファで多くの家がイスラエル国防軍により破壊され、イスラエルは国際的に非難を浴びている。

 そのようなトンネルは、その所有者たちにとって重要な金づるであり、それを死守するためにイスラエルの巡回警備兵たちに対する銃撃がこれまでにも相次いでいた。それゆえにトンネルが発見された家だけではなく、パレスチナの武装者たちが、発砲してくる建物なども破壊の対象となる。

 イラクにおいて最新鋭の装備を備えた米軍でさえ、米兵を対象にしたテロに手を焼き、打つすべがないといった状況である。テロの抑止、またテロからの防御は、非常に困難なものであり、イスラエルが行っているそうした破壊攻撃は、テロ抑止のための窮余の一策である。

 そうした国際非難は、テロの実態、あるいはその現実を無視してのものに過ぎない。家や物品であれば、建て直し、買い換えることができる。しかし、テロによって無残に奪われた命は、もはや取り戻すことはできないのである。


3.ストライキ

 イスラエルの経済成長を支えたハイテク産業の悪化、3年以上続く、インティファーダーの影響などでイスラエル経済は大打撃を被っている。それに対してネタヌヤフー蔵相は経済立て直し政策を計り、大幅な予算の削減を行い、また年金制度の改正も進めている。2004年度の予算編成で新たな予算削減と人員整理が盛り込まれ、そうした動きに反対して国内最大の労働組合組織、ヒスタドルートが全面ストライキ突入を宣言。すでに内務省や交通センターなどをはじめとする官公庁などの部分的なストライキが行われているが、ゼネストが敢行された場合、ごみの回収を含む公共サービス、空港や港湾、バス、列車、ガソリンの供給、電気・水道・電話などの設備の修繕、病院、銀行、郵便配達などの働きが低下あるいは停止することになる。企業連合会長のオデッド・ティラ氏はストライキによって一日に約200億円あまりの損失を招くことになると警告を発している。

 労働裁判所の裁定により今回のゼネストが禁止され、4時間のみ許容されることになり、大きな混乱は回避されたものの解決に向けての交渉の難航は必至である。

 ネタヌヤフー蔵相は、3つの特別な交渉団を作ってそれぞれの問題にあたらせることを提案している。ひとつは、省庁の組織改革に関して、次に公共事業部門の改革、そして、最後に年金と退職に関して専門に交渉に当たらせるというものである。


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