イスラエル・レポート

200312





この過ぎた一ヶ月もイスラエルでは、いろいろと大きな事件や動きがありました。面白い話題なども含めて、そうしたニュースを取り上げさせていただきます。





1.イスラエルは世界最大の脅威

 まず、ショッキングなニュースとして、ヨーロッパ委員会の統計によるとイスラエルが、世界平和を脅かす最大の脅威となっているとの結果が出されたということです。それは、7,500人のヨーロッパ人を対象に取られたアンケートによるものですが、そのアンケートには北朝鮮やイランといった国も含めて15カ国が候補として挙げられていました。しかし、その結果はヨーロッパでいかにイスラエルについて歪曲されたニュースが流され続けてきたかということを物語っています。筆者自身もドイツでニュースを見たときに何度も驚かされました。パレスチナ側のテロに対する応酬としてイスラエル軍が行動を起こしたときに、そのイスラエル軍の行動が映像とともに大きく取り上げられ、いかにも理不尽な行為であるかという印象を与えます。そして、パレスチナ側が先に行ったテロ行為について言葉だけで簡単に触れるだけということがよくありました。時には、そうしたパレスチナ側のテロ行為に触れないということさえありました。ですから、後に確認して、やはりイスラエル軍が行動を起こした背後に、何かの理由があったことを見出します。

 実際にイスラエルに8年間住んで、実感させられることは、イスラエルの人たちは戦いに疲れ、本当に平和を求めているということです。しかし、それは単に一時的な静けさで はなく、彼らの生存権が認められ、安全が保障された状態での平和です。その実現のためには、どうしてもハマスやイスラム聖戦などのテログループの解体ということが必要です。自国を守るために戦い、平和を実現するために戦っているイスラエルが世界平和の最大脅威であるとみなされることは、世界の正義と公正に関する感覚が全く逆転してしまっているとしか考えられません。無差別に人を殺害し、人々を恐怖のどん底に突き落とすテロの恐怖がどれほど真剣に受け止められているのでしょうか。イスラエルがテロを引き起こす原因となっていると考えるなら、インドネシアやフィリピンで起こっているイスラム原理主義者たちによるテロは、どのように考えればよいのでしょうか。


2.ジェニン、ジェニン

 20024月、ジェニン難民キャンプでイスラエル軍による虐殺行為がなされたとパレスチナ側はイスラエルを声を大にして非難しました。500人にも及ぶパレスチナ人が殺害されたとパレスチナ側は報告していましたが、実際に国連の調査によって、そうした虐殺行為がなかったことが判明しました。そうした時期に「ジェニン、ジェニン」という映画がムハマッド・バクリ監督によって製作されました。それは、イスラエル軍が、虐殺行為を行ったということを映像で訴えるものです。しかし、それは事実と全く相反する内容のもので、検閲局はその映画の上映禁止処分を出していました。

 ところが最近、最高裁でその上映禁止処分が言論の自由を侵すものであり、不当なものとして破棄され、公開の許可が出されました。

 その最高裁の判決に対して、ジェニンでの作戦で命を落としたイスラエル兵の遺族たちは、その兵士たちの名誉を著しく傷つけるものであるとして、不服の申し立てをしています。

 これは、言論の自由とは一体何であろうかと改めて考えさせられる出来事です。悪意と偽りによって、人をおとしめるようなことが言論の自由の名の下で許されてよいのでしょうか。

 この映画が上映されることによって、虚偽が真実とみなされ、世界に広がっているアンティ・セミティズムが、益々増大することになるでしょう。果たして、それが言論の自由と言えるのでしょうか。


3.最も人気のある名前

 ハ・アーレツ紙によると、2002年に生まれた赤ちゃんで、最も多く名付けられた人気の名前は、女の子ではノア、そして、男の子ではダニエルで、それは2001年にも同じでした。女の子の名前で、ノアに続いてシラ、マヤ、アディ、ヤエルの順で、男の子では、イタイ、ダビッド、ノアム、エド、と続きます。イスラエルに住むアラブ人の間では、モハメッドが男の子に最も多く名付けられた名で、女の子では、アヤでした。


4.ビタミンB1不足

 赤ちゃんが脳にダメージを受けて、病院で治療を受けるというケースが続き、その件について調査が行われました。20人あまりが入院し、そのうち3人の赤ちゃんが亡くなりました。調査の結果、それらの赤ちゃんが、ドイツの会社フマナから輸入して、レメディアによって販売されていた粉ミルクを使っていたという共通点が見出され、その製品を調べたところ、ビタミンB1の量が必要摂取量の10分の1にしか満たないことが明らかになりました。フマナの説明によるとそれは、製品の改良を行った際、大豆の中にすでに十分な量のビタミンB1が含まれているものと思い込み、過剰気味であったビタミンB1を極度に減らしたことに起因しているとのことでした。

 
被害者側はレメディアを相手取り、10億シェケル(2457660万円)の償いと115百万シェケル(282630万円)の損害賠償を求めています。


5.反イスラエル的風刺漫画が受賞

 ブリティッシュ・インディペンデント・ニュースペーパーが主催するイギリスの風刺漫画の年間コンテストの政治部門で、イスラエル軍の爆撃を背景に醜い姿のアリエル・シャロン首相が、パレスチナ人の赤ちゃんの頭を噛み千切っているという絵が一等に選ばれました。

 授賞式で、作者のデイブ・ブラウン氏は、イスラエル大使館が怒りをもって反応したことがかえってその風刺漫画に注目を集めることになったと、大使館に対し感謝の意を述べました。


6.ジュネーブ合意

 イスラエル側では元法務大臣のヨシ・ベイリン氏、そしてパレスチナ側では元パレスチナ情報相ヤセル・アベッド・ラボ氏が中心になって新しい和平案を推し進めています。「ジュネーブ合意」と呼ばれるもので、あくまでも民間的なレベルでの運動に過ぎませんが、海外において多大な支援を受け、大きな影響を及ぼしています。ヨシ・ベイリン氏は、前回の選挙で労働党からの推薦をはずされ、超左翼のメレツに加わりましたが、メレツは大幅に議員数を減らす結果となり、氏は落選することになりました。今回のこの試みは、氏の政界復帰をもくろむひとつの秘策でした。新たな政党を設立するために人々の関心を呼ぶという意味で、この試みは氏にとって大成功であったと言えるでしょう。

 この新たな動きは、結果的にシャロン首相に圧力をかけるものとなりました。アメリカ主導の和平案「ロードッマップ」ではパレスチナ側が不法な武装集団の解体と不法な武器の回収を条件として求めています。ですから、シャロン首相はあくまでもパレスチナ側がこの条件を満たすことが新たな交渉再開の必須事項としていましたが、この和平試案「ジュネーブ」合意に対する大きな反響のゆえに、たとえ休戦協定の形であってもパレスチナ自治政府クレイ首相との交渉を進めるという方向に進んでいます。


7.ベツレヘムの奇跡?

 ベツレヘムに大きな話題を呼ぶ赤ちゃんが誕生しました。ラマダンの第27日目(アッラーがモハメッドにコーランを与えたといわれる日)に生まれ、その赤ちゃんの右側の口元から耳にかけてくっきりとアラブ語で文字が浮かび上がっていたのです。その文字とは、その赤ちゃんのおじに当たる人の名前でした。テログループ、ハマスのメンバーで8ヶ月前にイスラエル軍によって殺害されたアラという名です。

 殺されたおじの母が喜びをもって次のように語りました。「私たちは、この赤ちゃんを死んだおじのように正しい、良い人に育てたい。
−中略−

この奇跡は、神のために戦って死んだものは決して死ぬことはないということを証明している。これはまた彼らがパラダイスにいることを証明している。」

 2,000年前にベツレヘムでイエス・キリストが平和の君として生まれましたが、この赤ちゃんは平和とは逆に、更なるテロとテロによる殉教を呼びかける象徴となっています。


 三宅弘之

 LCJE海外協力レポーター

(ハ・アーレツ、エルサレム・ポスト、イスラエル・トゥデイ、ICEJ、イスラエルテレビ・ラジオニュース、)




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