イスラエル・レポート
2004年4月




1.アシュドドでの自爆テロ

 3月14日イスラエルの港湾の町アシュドドで同時多発テロが発生。ガザから二人のテロリストがアシュドドの港に忍び込み、一人は門の前で自爆し、もう一人は施設に入り込んで自爆した。このテロによって10人が死亡。また、テロリストが施設に入り込んで自爆した所は危険な薬物の貯蔵庫の近くで、重大なテロを計画していた可能性もある。ハマスとアル・アクサ殉教旅団がそれぞれ犯行声明を出している。




2.バス乗っ取り計画

 アラファト議長傘下の武装グループ、タンジームが二台のバスの乗っ取りを計画していた。二台のバスにそれぞれ一人の自爆テロリストを送り込み、ベツレヘムにある聖誕教会に連れ込み、人質として乗客を拉致するというものであった。その人質によってパレスチナの囚人の解放を迫る計画であったが、幸い未然にその計画が漏れ、防ぐことができた。


3.10歳の少年を利用する

 パレスチナ人の町ナブルスの検問所で、10歳の少年が爆弾の入ったバッグを保持していたために逮捕された。そのパレスチナ少年、アブダラ・クラン君は、検問所で女性や弱者などからバッグを預かり運ぶ仕事をしていた。その彼のカートにテロリストが爆弾の入ったバッグを預け、携帯電話によるリモート操作で起爆させ、その少年もろとも爆破しようとしたものである。幸いその起爆装置が働かず、大事に至らなかったものの正に常軌を逸する行為である。少年は数時間の取調べの後に解放された。


4.誤って殺害

 ジョージ・コーリーさん(20歳)が、夜の7時半頃、ジョギングをしている途中に通りかかった車から突然発砲され、首と胃に銃弾を受け死亡した。アル・アクサ殉教旅団が犯行声明を出したが、すぐにコーリーさん家族に対して謝罪することになった。それは、彼はアラブ人クリスチャンで、著名な弁護士の息子であったからである。


5.アフメッド・ヤシン殺害される

 パレスチナのテロ・グループ、ハマスの精神的指導者アフメッド・ヤシンが322日の早朝5時、モスクでの礼拝を終えて帰路につくところ、イスラエル空軍の軍用ヘリが放ったミサイルによって殺害され、彼と二人のハマス幹部、それに数人のボディーガードも共に殺された。この暗殺を受けて、ハマスやアル・アクサ旅団、また他のパレスチナ武装集団は報復を誓っている。また、アラファト議長もパレスチナ人に3日間喪に服するようにとの声明を出した。また、ガザ、ユダヤ、サマリア地区を始め各地でパレスチナ人たちの抗議行動が起こっている。一人のパレスチナ人が、バスに乗り込んでナイフで乗客を刺す、また、歓談していた女性たちのところに斧を持ったパレスチナ人が襲い掛かり、一人は頭部に重傷を負うなどの事件も起きている。

シャロン首相がガザからの一方的撤退、さらに西岸地区からも一部撤退するとの声明を出して以来、パレスチナ側のテロ行動が激化していた。それは、シャロンの声明は彼らにとっては、イスラエル側が白旗を挙げたかのように映ったためである。テロが最終的に勝利をもたらすとの認識が彼らのうちに強くなったものと思われる。それに対して今回のヤシンの暗殺は、決してテロが勝利したのではないとのメッセージを送るものであった。

イスラエルの港湾の町アシュドドで起こった同時多発テロ事件は、危険な薬物の保管所の近くで起こっており、重大なテロを目論んでいた可能性もあり、ヤシンの暗殺はそうしたテロの激化に対する警告でもあった。


三宅弘之
LCJE海外協力レポーター


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