イスラエル・レポート
2004年5月





1.偽りの警告

 「神殿の丘にあるアル・アクサモスクが危機に瀕している」との偽りの警告がアラファト議長府から発され、金曜日の礼拝日に2万人にも及ぶパレスチナ人が神殿の丘に詰めかけ、若者たちがイスラエル警官に投石を始めた。イスラエルの保安部隊は直ちにモスクに入り、催涙弾を投げると共に、ゴムでカバーされた銃弾を撃ち放ち、少なくとも40人のパレスチナ人が負傷した。それは、昔ながらの手法で、無知で洗脳された人々を暴動に煽るためのもので、最終的にはイスラエルの自衛行為に非難を集めるためのものである。


2.ブッシュ、シャロン会見

 414日ブッシュ大統領とシャロン首相がホワイトハウスで共同記者会見を行った。ブッシュ大統領は、新しい現実という表現を使って、イスラエルの入植地の完全撤退が不要なこと、またパレスチナ人難民はイスラエルの領土にではなく、パレスチナ側に帰還すべきことを表明した。これは、シャロン首相のディスエンゲージメント・プランをアメリカ主導の和平案、ロードマップの枠内で支援するものとして表されたものである。ガザ地区からの完全撤退、そして、ユダヤ・サマリや地区からの4つの入植地の撤退が和平案に新たな命を吹き込むことを期待してのことであった。しかし、パレスチナ側はそうしたアメリカの姿勢に大きな憤慨を表した。


3.エイズ爆弾

 アラファト議長傘下の武装グループ、ファタハ
が新たなテロ攻撃を試みた。それは、爆弾ベルトにエイズに感染した血を装着して、自爆テロリストを送り込むというものであった。しかし、事前にその計画がイスラエル側に伝えられ、首謀者であるラミ・アブドゥラ(24)が逮捕され食い止めることができた。

 エイズ・サービスセンターの主任であるイチク・レビ博士は、今回のような試みはさして恐れるに足りないものであると語った。それは、エイズウィルスは体外で8時間以上生息できないこと、また、爆発によるショックと熱に耐え得ないという理由によるものである。

 また、25キロの爆弾の入ったバックを運んでいたパレスチナ人女性が逮捕された。捜査の結果、彼女はアラファト議長傘下のアル・アクサ殉教旅団によって、送られたものであり、その爆弾を指定のところに運ぶ途上であったことが判明した。


4.ハマスの新指導者も暗殺される

 
テログループ、ハマスの新指導者アブドル・アジズ・ランティシ(56)がヤシンに続き、イスラエル空軍のミサイルによって殺害された。ヤシン暗殺から日も浅く、まさかと思われる出来事であった。このミサイル攻撃は、同日の午後、ガザ北方のエレツ検問所での自爆テロ事件を受けてのものであった。このテロによって検問所にいた一人の警官が殺害され、3人のイスラエル人が負傷した。ハマスは報復を誓う一方、新たに選出された、ハマスのリーダーの名前を公表することを避けている。それは、再びイスラエル軍の標的となることを恐れてのことである。イスラエル側もテロとの対決を強化することを表明している。


5.裏切り者?それとも英雄?

 核施設で技師として働いていたモルデカイ・バヌーヌが核施設に関する情報を漏洩し、その罪で18年の刑を宣告された。そして、今年の4月21日に刑の満期を迎え、自由の身となった。彼は195410月にモロッコに生まれ、1963年に家族と共にイスラエルに移民した。1976-85年にかけてイスラエルのディモナにある原子炉センターで技師として働き、1986年にイギリスの「サンデータイムス」に核施設に関する情報を提供した。

 そして、同年イスラエルの諜報機関モサッドの手によって拘束され、刑に服することになった。彼はまた聖公会で洗礼を受けたクリスチャンでもある。彼は刑務所から開放されたものの、彼の行動は制限され終始監視されている。向こう一年間はパスポートの発行を受けることができず、海外に出ることは禁止されている。また、大使館に入ることも許されない。それに外国人との接触が禁じられているとともに、以前の仕事に関する報道インタビューに答えることも禁じられ、それを目的として近づいてきた記者がいた場合には警察に通報することが義務付けられている。さらに、彼がどこか別の場所で眠る場合は24時間前に警察に連絡する必要があり、インターネットでのチャットに参加することも許可がない限り許されないというものである。

 イスラエルでは彼のとった行動を勇気ある行動として捉え、ヒーローとして称えるグループと逆に裏切り者として非難するグループに分かれている。


.イスラエルならではの発明

 テロの脅威にさらされているイスラエルならではの発明がこのほど公表された。それは、インターナショナル・テクノロジー・レーザー社によるもので、レーザー光線を使って、爆弾や危険な化学物質などを数メートル離れたところから検知するというものである。その特殊なレーザー光線を放つとき、その放射を受けた対象物はそれぞれに特有の光の波を反射し、その特徴から物質を割り出すというものである。もしも危険物が検知された場合、直ちに警報がなる仕組みになっている。これが実用化されれば、警備の安全化と強化を図ることができる。


7.反ユダヤ主義への対決姿勢

 4月28-29日にベルリンで開かれた欧州安全保障・協力機構(OSCE)会議で、反ユダヤ主義の解決に向けての決議が採択された。そこに含まれる内容は、反ユダヤ主義や他の民族主義的差別は、いかなる理由によっても正当化されるものではない(イスラエル・パレスチナ情勢が反ユダヤ主義を正当化しているとの背景から)。反ユダヤ主義的犯罪に関するデータを収集し定期的にOSCEに報告する。反ユダヤ主義に対する正しい教育プログラムを促進させる。また、反ユダヤ主義を煽る報道やインターネットに対して何らかの対策を講じる等である。欧州に広がる反ユダヤ主義に対する具体的な方策を講じるひとつの突破口として評価される。

三宅弘之
LCJE海外協力レポーター

(ハ・アーレツ、エルサレム・ポスト、マアリーブ、イスラエル・トゥデイ、OSCEインターネット公式サイト、ヴァヌーヌ公式サイト、イスラエル テレビ・ラジオニュース等)


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