イスラエル・レポート
2004年6月






1.どうしてそんなことが?

 どうしてそんなことができるのかというようなテロ事件が再び起こった。シャロンの撤退計画で今話題になっているガザの入植地グシュ・カティーフへ向かう車が銃撃テロに遭ったのだ。そこには4人の小さな子供と妊娠している母親が乗っていた。しかもテロリストたちは、コントロールを失って、砂上に乗り上げた車に走りより、母と4人の子供たちを目前にしながら至近距離から彼らの頭を打ち抜いたのである。恐怖でおびえる小さな子供たちを見ながら、その頭を銃で打ち抜くなど、とても考えられないことである。

(イスラエル・トゥデイ誌6月号4ページ参照)


2.遺体の部分をもてあそび隠す

 テレビのニュースで驚くような映像が飛び込んできた。それは、兵員輸送装甲車が、パレスチナ人によって路上に仕掛けられていた100キロの爆弾で吹き飛ばされ、6人の兵士が殺され、その遺体の部分を集まったパレスチナ人たちが、もてあそび、袋の中に入れて、それを持ち去ったのである。

 イスラエル国防軍は、その惨劇の報を受けて、直ちにガザに進攻し、その遺体の捜索に当たった。すべての遺体の部分が返されるまでは軍を引き上げないとのイスラエル軍に抗しきれず、エジプトの仲介もあって、隠蔽されていた遺体の部分が返還された。

 しかし、その惨劇の衝撃が覚めやらぬ間に、再び5人の兵士を乗せた兵員輸送装甲車が対戦車砲によって爆撃された。その装甲車には1トンの爆弾が積み込まれており、その爆撃によって誘発的に1トンの爆弾が爆発し、装甲車もろとも兵士たちの体は文字通り木っ端微塵に飛び散った。それらの惨劇は、エジプト国境の町ガザのラファにあるフィラデルフィと呼ばれる道を警備走行中に起こったのである。


3.イスラエル国防軍による家の破壊

 立て続けに起こったそのような惨劇を受けて、イスラエルはフィラデルフィの道を広げ、警備に当たる兵士たちの安全を図ることにした。また、武器などが不法にエジプト側からトンネルを通して、運び込まれているが、その道を広げることによって、トンネルを作ることを困難にするという意味もある(トンネルはその道の下を通っている)。

 そのためには道の近くに建てられている家々を破壊する必要がある。しかし、そうした防衛策をめぐってイスラエルは世界から大きな非難を受けている。家を破壊され、行き場をなくしたパレスチナ人母子が泣いている映像などがニュースで世界中に流されている。しかし、そうした家々の地下には武器密輸のためのトンネルが掘られていたり、あるいは、そうした家々からイスラエルの警備兵に対する銃撃が繰り返されているのである。

 その地点はパレスチナ側にとっても、武器を得る重要な拠点であり、また、トンネルを掘ってそれを運営しているものたちにとっては、重要な金ずるでもある。そうした意味で、パレスチナ側もそのトンネルを死守しようとするのである。


4.暗礁に乗り上げた撤退計画

 シャロン首相が提案しているガザ地区にあるすべての入植地、またユダヤ・サマリヤ地区にある4つの入植地からの撤退を巡って、与党政党であるリクード党内での投票がなされた。その結果、反対多数(約60%)で、実質的にシャロンの撤退計画は暗礁に乗り上げ、原案の改定を余儀なくされた。しかし、後に出された改定案(4段階による撤退)についても閣僚会議で賛成を得ることができず、シャロン政権が危機に瀕する形となった。その反対勢力には、蔵相のネタヌヤフー、外務のシャローム、教育のリヴナットなどが含まれており、特にシャロン首相とネタヌヤフーとの確執は激しさを増している。もしも、シャロン首相がその案を強行した場合、リクード党の分裂にもつながりかねず、かといって案を引っ込めることは、彼の首相としての地位を危うくするものであり、またその案を後押しするアメリカとの関係の悪化にもつながりかねない。まさに前も後ろもふさがれ立ち往生という形である。


5.マリファナの日

 イスラエルでもマリファナ・デイが、テルアビブで2,000人の参加者を集め祝われた。しかし、80人の私服警官が警戒に当たっており、マリファナ・パーティの様を呈してきた大会は、すぐに中止させられ、約30人が尋問のために留置された。


6.やくざ並みのIBAの取立て

 IBAは、「Israel Broadcast Authority」の略語で、日本ではNHKにあたるものである。彼らは受信料取立てのためにやくざ顔負けの方法を用いている。道にバリケードを設け、車を止めて受信料の支払いを求め、もしも拒むならば車を押収するというものだ。7年分さかのぼって、約13万円の支払いが要求されるケースが多い。しかし、彼らには、道で車を止める権威がなく、車を押収する権威も無い、だから言い換えれば、不合法な取立てということである。


7.夏時間の継続

 内務大臣アブラハム・ポラーズによって提案された夏時間の継続について立法閣僚委員会が承認し、この一年試行的に実行されることになった。その結果、今年は、冬時間に変わる922日も変更されないことになった。

 夏時間を継続することによって、電力などの節約、あるいは仕事の向上、余暇の時間が増えるなどの利点が挙げられる。

 しかし、超正統派はそれに反対している。なぜなら、日中が長くなることによってヨム・キプール(大贖罪日)の断食が少しでも大変になるからである。


三宅弘之
LCJE海外協力レポーター


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