2002年8月14日 イスラエル選手金メダル獲得

2002年8月2日 ヘブライ大学でのテロ事件から


イスラエルからのニュース
2002年8月14日

 

1.テロまたテロの一日

 一日に4件ものテロ事件が起こり、11人が殺され、66人の負傷者が出ました。それは、8月4日の日曜日の朝、イスラエルの北方で、8時37分のバス自爆テロ事件に始まります。そのバス自爆テロでは、9人の死者を出すとともに、43人がけがを負いました。その後、1135分、エルサレムの旧市街のダマスカス門の近くで、電話会社の車が銃撃を受け、一人が死亡、さらに一人のアラブ人が巻き添えを受けて死亡し、16人の負傷者を出しました。さらに、別のバスが銃撃に遭い、3人が負傷、そして、一般の乗用車が道路わきでの爆弾に見舞われ、その上、銃撃を受けて、4人が負傷しました。

 これらのテロ事件により、パレスティナ人による暴動が始まって以来、イスラエル側の死者は600人を超え、さらに負傷者は4,400人を越えました。

2.国連の対応

 この悪夢のような一日の後、国連では臨時会議が招集され、イスラエルとパレスティナ間の問題について協議がなされました。しかし、その会議の中で決議されようとした議事は、一方的にイスラエルを非難するもので、イスラエルのパレスティナ自治区からの即時撤退を求めるものでした。しかし、パレスティナ側のテロ行為に対しては、非難が向けられることがありませんでした。その一方的な決議案に反対したのは、イスラエルとアメリカ、その他二つの小国のみでした。

3.イスラエルのテロに対する新しい対応

 イスラエル側は、テロ抑止策として新たな方策を打ち出し、敢行しています。それは、自爆テロを行う者が、英雄として祭り上げられ、さらには、遺族に対して、経済的なサポートが約束されるなどのことがあり、パレスティナ人の多くの家庭では、自分たちの子供にそのような行為を行うように奨励しています。

 そのような背景があって、イスラエル側では、そのようなテロ行為を行った者の家を破壊する、あるいは、家族の中でそのようなテロ行為に協力した者を他のパレスティナ自治区に移すという強硬策に出ています。それは、そのようなテロ行為を行おうとするパレスティナ青年たちに、家族の者が後に被るであろう被害を思い起こさせて、思い止まらせるためであり、さらには、家族のものにそのようなテロ行為の奨励を止めさせるためです。

4.貧困の中の金メダル

 今年のミュンヘンで開かれた屋内陸上ヨーロッパ選手権は、イスラエルにとって特別な意味を持つものでした。それは、過去にミュンヘン・オリンピックで起こった、イスラエル選手団を狙ったテロ事件から、ちょうど、30年を迎える年であったからです。

 一般的にイスラエルの陸上選手のレベルは低く、メダルに到達することは、ほとんど望み得ないものでした。しかし、この記念すべき大会で、棒高跳びのアレックス・アベルブック選手が5m8cmを跳び、見事に金メダルに輝いたのです。しかし、彼の住むアパートの水道は未払いのために止められており、彼の経済的な貧困生活をうかがわせていました。一夜にしてヒーローとなった彼は、イスラエルのベングリオン空港に盛大な歓迎を受け、国から褒賞金として7万シェケル、日本円にして約2百万を受け、また、他のスポーツ団体からも褒賞金を受け、さらには、彼のために寄付金が集められました。

 水道会社は、直ちに彼のアパートの水道を開きました。

 ちなみに、彼は27歳で、4年前にシベリヤのイルクツクからイスラエルに移民して来ましたが、過去においても1999年にシベリヤで開かれた世界陸上選手権で銅メダルに輝いており、さらには、2000年の屋内陸上ヨーロッパ選手権でもメダルを獲得していました。

三宅弘之

LCJE海外協力レポーター

(ハ・アーレツ、エルサレム・ポスト、マアリーブ、イスラエル・ツデイ、ICEJ、イスラエル・テレビ・ラジオニュース)


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イスラエルからのニュース
2002年8月2日

 

ヘブル大学での爆弾テロ事件

 

 この事件については、すでに日本の報道機関を通して皆様もご存知のことと思います。しかし、いくつかのことを付け加えてお伝えさせていただきます。731日の二時前にヘブル大学の食堂で、この恐ろしい爆弾テロ事件が起こりました。その日は、現代へブル語のテストの日で、たくさんの学生がいました。しかも、その時間帯は、ちょうど、テストとテストの間にある空きの時間で、食堂にはたくさんの学生がいました。このように、日にちの設定、あるいは時間帯の選び方などを見ても、内部事情に詳しいもの、学生か校内で働いているものの犯行ではないかと見られています。

 この爆弾テロ事件によって、たくさんの外国人学生が巻き込まれました。二人のイスラエル人と4人のアメリカ人、そして、アメリカとフランスの両国籍を持つ人など、7名の人々が無惨に殺害されました。しかし、被害は死亡者だけではなく、多くのけが人も出ています。テロリストが食堂に残した爆弾入りのバッグの中には、爆発物とともに、多量の釘やスクリュウなどが詰め込まれていました。そのため爆発によって身体の器官の一部が吹き飛ばされたり、やけどを負ったり、あるいは、釘やスクリュウなどが身体の中に入ったりという、大変な被害が出ています。なかには、釘が心臓に入ったり、頭の中に入ったり、首に刺さったりなどして、治療が非常に難しいということがあります。三人のクリスチャンの韓国人学生も大怪我を負いました。一人は牧師で、頭に釘が入り、非常に危険な状況にあるということです。さらに、一人は、顔の判別をすることができないほどの火傷を負っています。幸い、そこに居合わせた二人の日本人学生は、たいした怪我も無くすみましたが、しかし、そこで受けたショックは、彼らの心に大きな傷を残すことになるかもしれません。

 

 このような現実を前に、世界は目を覚ますべきであると私は言いたいと思います。テロをテロとして扱う、これは当たり前のことですが、残念ながら、このようなテロ行為が正しく扱われていないというのが現実です。それは、そうした破壊行為は、かわいそうなパレスティナ人が、彼らの権利を主張するひとつの方法であり、イスラエルが、彼らの権利を奪い、抑圧していることが悪いのであるというような見方をしている人々が多いのではないでしょうか。日本の報道の扱い方にしてもそのようであると思います。

 しかし、いかなる理由があるにせよ、このような行為が果たして許されるべきことでしょうか。テレビのニュースを見ている時に、驚くような映像が目に飛び込んできました。それは、このテロ事件を受けて、パレスティナ自治区にあるパレスティナ人たちが屋外の広場に集まって、歓呼の声を上げて飛び跳ねて喜び合い、カメラに向かってVサインを示しているのです。果たして、このようなことが許されるべきなのでしょうか。

 

 私たちは、テロという無差別殺人とその犯罪をとどめるためになされている行為とを区別する必要があります。報道の取り扱い方は、この二つの行為を同等において、報復合戦であるとし、パレスティナ側とイスラエル側の双方に問題があるとします。しかし、それは正しくありません。パレスティナ人、テロ・グループは、無差別に殺戮することを目的としています。しかし、イスラエル側の行動には、そうしたテロを抑止し、そのような行為を行うグループの組織を破壊することに目的があります。

 その行為自体が正しいかどうかということを論じるのではありませんが、ただ、その背後にある動機を理解していただくために書かせていただきます。イスラエル側が、テロ・グループの幹部たちを狙って暗殺行為をしていますが、このような行為に出るのは、いかに効果的にこのテロ・グループの組織を破壊し、できるだけ、関係の無い人々を巻き込まないように考えているためです。自爆テロをした人の家を破壊するという行為、これもうわべだけを見るとなんとひどいことをと思われるかもしれません。しかし、その背後にある理由を理解しなければなりません。それは、その自爆テロを完工した人の家は、人々が集まり、そのような行為を賛美し、さらに、人々をそのような行為に駆り立てていく巣窟となってしまうのです。

 また、最近、自爆テロを行った人の家族が、別のパレスティナ自治区に移されるということがありました。家族まで罰する必要が無いのではないかと思われる方がいらっしゃるかと思います。しかし、このこともその背後にある理由を理解する必要があります。ひとつに、自爆テロリストたちは、イラクやサウジ・アラビヤなどから家族の経済的な支援が約束され、また、人々から家族も賞賛されるということを信じて、そのような行為にでます。ですから、そのような行為を少しでも阻止するために、もしも、彼らがそのような自爆テロという行為をしたなら、家族は苦しまなければならないということを示す必要があるのです(実際は、同じパレスティナ自治区の中で居住地を移動するということで、それほど、大きな苦しみということではないのですが)。

 また、イスラエル軍は、パレスティナ自治区に侵入しています。しかし、これもテロを抑止するという目的に沿って行動が取られているのです。もしも、テロという行為がなければ、彼らは決してそのようなことをしません。それは、パレスティナ人の出入りを効果的に監視し、テロリストたちがイスラエル領内に入ることがないようにするため、また、テロリストたちを探し出して、逮捕し、さらに、テロに使うための武器弾薬を押収したり、そのような武器を製造しているところを見つけ出して破壊するためです。それらのすべての行為は、恐ろしいテロを阻止することが目的なのです。

 イスラエルの報復行為に対しても、それを、パレスティナ側のテロ行為と同等に見る傾向があるように思います。しかし、それも正しいものではありません。なぜなら、その報復行為も更なるテロの抑止を目的としているからです。このように言いますと首を傾けられる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、そのことを理解するためには、文化の違い、考え方の違いというものを考慮に入れる必要があります。

 日本的な習慣に従って海外で行動するなら、とてもおかしなことになってしまうことがあります。例えば、プレゼントを買って、それを『本当につまらないものですが』といって、イスラエル人、あるいはヨーロッパ人に渡したとします。彼らは、それをどのように受け止めるかといいますと、そんなつまらないものをどうして持ってきたのか、つまらないものならいらない、ということになりかねません。

 ひとつのアラブ人の対処法として、力には力という考え方があります。もしも、暴力を受け、それに対して何もしないということになれば、相手は、その人を弱いものであると判断し、さらに殴りかかってきます。しかし、相手が自分よりも強いと見ると、そのような行為をとどめるのです。ですから、彼らの中で安全を確保するために大切なことは、大きな部族の中に含まれているということです。それは、部族が強大であればあるほど、その報復を恐れて、他のアラブ人が襲うということがないのです。ですから、西洋あるいは日本的なやり方で、今のこのイスラエル、パレスティナ間の問題を考えるならとんでもないことになってしまいます。前イスラエル首相のバラク氏は、パレスティナのテロに対して、寛容策を持って答えました。そして、その結果が、テロの激化であり、彼は退任に追い込まれることになりました。

 ですから、イスラエルがパレスティナのテロに対して、力を持って応えるのは、そうするよりテロと戦う方法がないからです。

 テロによって、殺された人もそうですが、大変な傷を負って一生を送らなければならない人々、また、心に大きな傷を負った人々、さらには、父、母、あるいは両親を失って孤児となった子供たち、テロを取り巻く悲劇は、甚大なものなのです。

 テロに対して、世界はもっと声を上げて非難すべきであり、はっきりとした対決の姿勢を示すべきです。

三宅弘之

LCJE 海外協力レポーター


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