パレスチナはどのようにメディアを操作しているか

(イスラエルツディ2002年12月号。LCJEから転載の許可を得ました。)



ニュースの背後にあるものは?

 パレスチナ自治区からのニュースの大半はパレスチナ人ジャーナリストから送られてくるものであり、従ってその報道の多くに偏りがあるということを知る人々は非常に少ないと言えるでしょう。これは世界中に発信されるテレビ映像について特に言えることです。これらのテレビ映像はロイターやAPのような世界的な通信社で働いているパレスチナ人カメラマンが撮っているのです。

 その理由は簡単です。外国人ジャーナリストのほとんどはエルサレムに本拠地があります。それでエルサレムから離れたパレスチナ自治区でイスラエル軍の捜索が行なわれたり夜間外出禁止令が出る場合、写真を撮るのは元々その地区に住むパレスチナ人ジャーナリストなのです。

 同じことが電信を用いるレポーターにも言えます。彼らはパレスチナ自治区からニュースをエルサレムの外国通信社に、また世界各地の通信社に提供するのです。彼らはその現場にいるパレスチナ人なのです。

 「こういう実情なので、外国のメディアが反イスラエル的な姿勢であるのは驚くべきことではありません。」とイスラエル最大の新聞であるイディオト・アフロノトのアラブ問題専門家のロニ・シェイキッド氏は語っています。さらに同氏はイスラエルツディに対して「アラブ人ジャーナリストの狙いはただひとつ、世界中の人々に、イスラエルは悪いと思わせることなのです。それと対照的に、イスラエルの特派員は外国の記者達と共に仕事をしています。」と述べています。



パレスチナのメディア管理

 ほとんどの外国通信社はパレスチナ人を雇用しています。彼らは情報を提供し、インタビューを設定し、フィクサー、つまり危険なパレスチナ自治区内でのガイドとしての役割を果たすのです。GPO(イスラエル政府報道局)長官であるダニエル・シーメン氏は「外国通信社はパレスチナ人を雇う以外に選択肢がないのです。だからイスラエルは外国のメディアに悪く思われるのです」と述べています。

 シーメン氏は、「パレスチナ人はジャーナリストやテレビ局が取材する場所と時間を定めることにより、メディアを操作している。」と語っています。同氏は、そのひとつの例としてテロリストのマルワン・バルゴウティ(現在イスラエルで裁判中)を挙げて次のように語っています。「バルゴウティは外国の大手三つの放送局に、彼の部下がベイト・ジャラ(ベツレヘムの近く)からエルサレムにかけて銃撃する正確な時間を教えたのです。テレビ局はパレスチナ人の銃撃を撮影できませんでした、彼らに許可されたのは、イスラエルの報復攻撃を撮影することだけだったのです。」

 心理戦の専門家であるロン・シュライフェル博士(バル・イラン大学)も次のように述べています。「イスラエル軍兵士は外国人ジャーナリストがある場所に到着するのを見るとすぐ、何かが起きるぞ、ということがわかるのです。外国通信社はパレスチナ自治区には報道の自由が無いということを知っているのですが、そのことは気にならないのです。なぜなら彼らは最新ニュースを手に入れたければパレスチナ人と協力しなければならないことをわかっているからです」。

 シュライファー博士はまた、「外国のメディアは熾烈な競争をしています。事件の現場にピッタリ間に合うように駆けつけて、最新の情報を得てスクープするのが至上命令なのです。パレスチナ人が外国の通信社に教えるのは何を報道するかではなく、どれを報道するかなのです。私達はこれをメディア管理と呼んでいます。」と語りました



ヨーロッパに広がる反イスラエルの動き

 GPO局長のシーメン氏は反イスラエル報道が目立つものとしてBBC、スペイン、フランスの放送を指摘しています。これを説明するのにイスラエルの「守りの盾」作戦の期間中、昨年の春ユダヤ、サマリヤ地区で起きた腹立たしい事件について語ってくれました。

 パレスチナ人が、イスラエル人兵士がベツレヘムで聖職者を殺したと発表した時、どのメディアもその発表の正当性を疑いませんでした。それが正しいかどうか地元のバチカン代表部に電話をかけて確かめてみればよかったのです。しかしヨーロッパの通信社の多くはそれを事実として報道したのです。その翌日にはそれが嘘であったことが判明しました。しかしその時にはもう遅すぎたのです。

 シーメン氏は「ヨーロッパのジャーナリスト達は、反イスラエルの立場に立つパレスチナ人がもたらすニュースを確かめようとせず、反駁できない事実であるかのように報道します。その結果、彼らの報道はヨーロッパにおいて反ユダヤ主義の広がりに手を貸すことになるのです」。

 著名なイスラエルの作家であり、平和活動家であるアモス・オズ氏はヨーロッパに広がる反ユダヤ主義を批判して次のように言っています。「もし私がヨーロッパのメディアの視点を通してイスラエルを眺めるとすれば、イスラエル人口の70%は兵士で、29%は西岸地区の熱狂的入植者で、1%は平和のために活動する知的な素晴らしい人々というふうに受け取ってしまうだろう」。さらに同氏は続けます。「パレスチナ人の悲しみや苦しみを考えれば、彼らの現在の‘抵抗’は理解できるよ、とヨーロッパの人々が言うのを私はよく耳にします。他方で彼らはこうも言うのです、ユダヤ人は歴史上多くの恐怖を経験してきたので、ユダヤ人は自分たちが今どれほど暴力的になっているのか分ってないのだよ、と。これは言いかえれば、パレスチナ人が抵抗する時、彼らの暴力行為は理解できる、でもイスラエルが同じ事をすれば理解できないという意味なのです」。



ニュースを演出する

 シーメン氏はまた、エルサレムの週刊紙「コル・ハイール」のインタビューの中で、ニュースを演出することにかけて良心の呵責をなんら感じないパレスチナ人について次のように語っています。「イスラエル軍がテロリストを追跡し、パレスチナ人の空家を破壊する時、壊された家の中で人形を抱いて座りこむ子供の写真を何度も撮らせるのです」。

 こういうシーンを演出するのは簡単なことです。パレスチナ人ジャーナリストはこのおいしい仕事で約300ドルの報酬を受け取るのです。北部サマリヤ(ジェニン、ナブルス、ツルカレム)で働いているパレスチナ人カメラマンは、破壊された家の回りで嘆く子供や親の写真をでっち上げたことがあると認めています。彼は「イスラエル軍が破壊した家は元々空家でした、もし人が住んでいる家を破壊したのであれば私達は死体を撮影していたことでしょう」と同紙に事実を率直に語りました。

 さらに言えば、パレスチナ人ジャーナリストにはアラファト議長の怒りを買うようなことを報道しないだけの分別を持っています。ロニ・シェイキッド氏は「アラファト議長を批判できるのは国外で発行されるアラブ系新聞だけです。アラファトが1994年パレスチナ地域で権力を握って以来、彼はパレスチナの報道の全てを掌握し、監視しています。」と述べています。これまでアラファト議長を批判したパレスチナ人ジャーナリスト達が脅迫され、処罰されてきたのも事実です。



支持を失うイスラエル

 シュライファー博士は、「イスラエルは20年前のレバノン戦争以来国際世論の支持を失うようになった。」と述べています。ベイルートを爆撃するイスラエルの戦闘機や民間人犠牲者の映像はイスラエルに大きなダメージを与えました。さらに事態は悪化しました。「1982年のサブラとシャティーラの難民キャンプでの虐殺はイスラエルについて報道する世界のメディアにとって転換点となったのです。」とシュライファー博士は語っています。イスラエル軍はテロリストを捕らえるために、「キリスト教徒」のファランジスト党の民兵部隊がサブラとシャティーラの難民キャンプに入ることを許可したのです。その結果数百人のパレスチナ人(女性、子どもを含む)が虐殺されました。当然、世界のメディアはイスラエルを非難しました、その時難民キャンプに入ることを許可したのがアリエル・シャロン国防大臣だったのです。「それ以来外国メディアに関する限り、イスラエルは悪者であり、パレスチナは善人なのです。」と博士は述べています。

 

イスラエルのジレンマ

 GPO長官としてシーメン氏はイスラエルに対するメディアの偏見を是正するために懸命に努力しています。イスラエルは報道の自由を支持しますが、どこかで線を引く必要もあります。「イスラエルは危機的状況にあるので、自国の利益を守らなければなりません。一方で我が国の利益を主張する必要がありますし、他方では我が国の良いイメージを外国のジャーナリストに与える必要があります」と同氏は語ってくれました。

 シーメン氏はイスラエルについて誤った報道をする外国人レポーターには断固とした対応をすると言明しています。少し前の事ですが、イスラエル軍がラマラで五人のパレスチナ人を処刑したという報道をしたアブダビテレビの特派員が国外退去になった事がありました。真相は、彼らは民間人ではなくイスラエル軍が隠れ家を捜索していたときの銃撃戦で射殺されたテロリストだったからです。

 治安上の理由でGPOはパレスチナ人ジャーナリストの全てに対し以前のようには記者カードを渡すことはしていません。「外国通信社は記者カードを手に入れると、それをパレスチナ人(必ずしもレポーターとはかぎらない)に渡します。それがあれば誰でもイスラエルの検問所を自由に通る事ができるのです」とシーメン氏は語っています。最近2人のパレスチナ人カメラマンが記者用車両を使って弾薬をパレスチナ地区にこっそり持ち込んだ容疑で拘束されました。その内の一人はロイター通信社に、もう一人はフランスの通信社に雇われていたのです。

 FPA(外国通信連盟)はパレスチナ人に記者カードを発行するのに非常に慎重なイスラエルの態度に声高に抗議しています。皮肉な事ですが、こうして外国通信社はパレスチナのメディア管理に協力していることになるのです。


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