列王記第一13−14章 「預言者の働き」


アウトライン


1A 神の警告 13
   1B 異教の祭壇 1−10
      1C 正確な預言 1−6
      2C あわれみと恵み 7−10
   2B 偽預言者 11−32
      1C 老齢者の預言 11−19
      2C 主の預言 20−25
      3C 偽預言の代償 26−32
   3B 警告の無視 33−34
2A 神の裁き 14
   1B ヤロブアム家の滅び 1−20
      1C 無意味な変装 1−5
      2C 子へのあわれみ 6−16
      3C 預言の実現 17−20
   2B レハブアムの悪行 21−31
      1C アシェラ像 21−24
      2C 財宝の損失 25−31

本文

 列王記第一13章を開いてください。今日は13章と14章を学びます。ここでのテーマは、「預言者の働き」です。さっそく本文を読みましょう。

1A 神の警告 13
1B 異教の祭壇 1−10
1C 正確な預言 1−6
13:1 ひとりの神の人が、主の命令によって、ユダからベテルにやって来た。ちょうどそのとき、ヤロブアムは香をたくために祭壇のそばに立っていた。

 私たちは前回、ソロモンが主にそむいて、他の神々に仕えるようになったため、その王国を引き裂くように主がされたところを読みました。ソロモンの家来であるヤロブアムが、ソロモンに反逆し、彼はエジプトに逃れました。ソロモンの子レハブアムが王位に着いたとき、北イスラエルの人々はヤロブアムを立てて、彼を通して重税を軽減してくれるようにレハブアムに頼みました。レハブアムは拒みました。そこでイスラエルはヤロブアムを王に立てて、それで王国が北イスラエルと南ユダに分裂しました。

 ソロモンの王国を引き裂くことをヤロブアムに伝えたのは、預言者アヒヤです。彼はヤロブアムに、「あなたが、主が命じることに聞き従い、主のおきてと命令を守って、主の目にかなうことを行なうなら、ダビデの家のように、長く続く家を建てよう。」との約束を与えました(1列王11:38)。けれどもヤロブアムは、自分の治世が始まったとき、金の子牛を造って、そのための祭壇をダンとベテルに造り、レビ人ではない一般人を祭司に任命して、自分勝手な新宗教を作り出してしまいました。そして今日学ぶところは、このヤロブアムの悪行を止めさせるために主が遣わされた神の人からの話しから始まります。

13:2 すると、この人は、主の命令によって祭壇に向かい、これに呼ばわって言った。「祭壇よ。祭壇よ。主はこう仰せられる。『見よ。ひとりの男の子がダビデの家に生まれる。その名はヨシヤ。彼は、おまえの上で香をたく高き所の祭司たちをいけにえとしておまえの上にささげ、人の骨がおまえの上で焼かれる。』」

 驚くべき預言を、この神の人は告げます。ヨシヤという具体的な名前を挙げて、ヤロブアムの祭壇の上で、人の骨が焼かれることを預言しました。これは、約350年後、南ユダの王ヨシヤによって、ことごとく実現しました。列王記第二2315節から17節に書いてあります。ヨシヤ王は、偶像礼拝をなくすために、ユダだけでなくイスラエルにも入って、偶像の祭壇を汚しました。死体は汚れたものとみなされましたから、人の骨を祭壇の上に乗せたのです。同じように、イザヤ書では、「クロス」という具体名を出して、この王によってユダヤ人が離散の地からエルサレムに帰還することを預言しています(イザヤ4445章参照)。クロスが王であった150年も前に、イザヤが預言したのです。

 このように、聖書の預言は巷にあふれる曖昧な内容の預言とは大きく違います。「東京に地震が起こる」と私が予言したところで、その予言が当たったということにはならないでしょう。ペテロは、「また、私たちは、さらに確かな預言のみことばを持っています。(2ペテロ1:19」と言いました。

13:3 その日、彼は次のように言って一つのしるしを与えた。「これが、主の告げられたしるしである。見よ。祭壇は裂け、その上の灰はこぼれ出る。」13:4 ヤロブアム王は、ベテルの祭壇に向かって叫んでいる神の人のことばを聞いたとき、祭壇から手を伸ばして、「彼を捕えよ。」と言った。すると、彼に向けて伸ばした手はしなび、戻すことができなくなった。13:5 神の人が主のことばによって与えたしるしのとおり、祭壇は裂け、灰は祭壇からこぼれ出た。

 ヤロブアムの伸ばした手は、突然、運動神経が麻痺してなえてしまいました。さらに、祭壇は裂け、灰がそこからこぼれました。

13:6 そこで、王はこの神の人に向かって言った。「どうか、あなたの神、主にお願いをして、私のために祈ってください。そうすれば、私の手はもとに戻るでしょう。」神の人が主に願ったので、王の手はもとに戻り、前と同じようになった。

 ヤロブアムは、ヤハウェのことを「あなたの神、主」と言っています。彼はもはや、主との関係はなくなっていました。そして、神の人は、ヤロブアムの願いを聞き入れて、祈ってあげました。主はここまで、この神の人をとおして、よくしてくださいました。これはみな、ヤロブアムが主に立ち返るようにするための、証しです。

2C あわれみと恵み 7−10
13:7 王は神の人に言った。「私といっしょに家に来て、食事をして元気をつけてください。あなたに贈り物をしたい。」13:8 すると、神の人は王に言った。「たとい、あなたの家の半分を私に下さっても、あなたといっしょにまいりません。また、この所ではパンを食べず、水も飲みません。13:9 主の命令によって、『パンを食べてはならない。水も飲んではならない。また、もと来た道を通って帰ってはならない。』と命じられているからです。13:10 こうして、彼はベテルに来たときの道は通らず、ほかの道を通って帰った。

 ユダから来た神の人は、主から具体的に、食事を取ってもいけないとも、また同じ道を通っていけないとの命令を受けていました。これはおそらく、北イスラエルが偶像で汚れており、この地域とは極力接することなく使命を果たすという意味があるかと思われます。そこで、ヤロブアムの申し出を断わりました。

2B 偽預言者 11−32
 ところが神の人がこの命令に従わず、自分の命を落とす悲しい出来事が次に書かれています。

1C 老齢者の預言 11−19
13:11 ひとりの年寄りの預言者がベテルに住んでいた。その息子たちが来て、その日、ベテルで神の人がしたことを残らず彼に話した。また、この人が王に告げたことばも父に話した。

 ヤロブアムが祭壇を造って、偶像を拝んでいた同じベテルに、老齢の預言者がいました。ユダからの無名の若者が、王の悪行に対峙するという大きな出来事を、この預言者の息子が伝えました。

13:12 すると父は、「その人はどの道を行ったか。」と彼らに尋ねた。息子たちはユダから来た神の人の帰って行った道を知っていた。13:13 父は息子たちに、「ろばに鞍を置いてくれ。」と言った。彼らがろばに鞍を置くと、父はろばに乗り、13:14 神の人のあとを追って行った。その人が樫の木の下にすわっているのを見つけると、「あなたがユダからおいでになった神の人ですか。」と尋ねた。その人は、「私です。」と答えた。13:15 彼はその人に、「私といっしょに家に来て、パンを食べてください。」と言った。13:16 するとその人は、「私はあなたといっしょに引き返し、あなたといっしょに行くことはできません。この所では、あなたといっしょにパンも食べず、水も飲みません。13:17 というのは、私は主の命令によって、『そこではパンを食べてはならない。水も飲んではならない。もと来た道を通って帰ってはならない。』と命じられているからです。」

 この老預言者は、このように主を愛する、すばらしい若者がいることを知って、ぜひとも時間を共に過ごしたいと願ったのでしょう。自分がベテルにいるにも関わらず、ベテルでの悪行について王に何も言うことができなかった、けれどもこの若者はわざわざユダから来て、主が大きなわざを行なってくださったのを知り、うれしくなっていたのだと思われます。けれども、神の人は、食事をしてはいけないという主の命令を、この老預言者にも伝えます。

13:18 彼はその人に言った。「私もあなたと同じく預言者です。御使いが主の命令を受けて、私に『その人をあなたの家に連れ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ。』と言って命じました。」こうしてその人をだました。13:19 そこで、その人は彼といっしょに帰り、彼の家でパンを食べ、水を飲んだ。

 老預言者は偽預言をしました。そして神の人は、この偽預言を聞き入れてしまいました。ここから、私たちは偽預言について多くのことを教訓として学ぶことができます。聖書の中には、偽預言者のことがたくさん書かれています。エレミヤ書には、ユダがバビロンを打ち負かすことができる、平和であると告げる、偽預言者のことがたくさん書かれています。また、新約聖書の中にも、偽教師や偽預言者、また偽使徒がたくさん現われることが預言されています。

 けれども、この偽預言は初めから悪いことを考えている悪人だけが行なうものであり、その他の人たちは無関係、偽預言者になどなることはない、と考えたら大きな間違いです。ここに、一預言者が偽預言をした例があります。彼は20節以降で本当の預言をします。にも関わらず、ここでは偽預言をしているのです。これはなぜでしょうか?

 第一に、老預言者は自分がこの人といっしょに食事をしたいという、自分の願望を果たすために、このようなことを言ったものと思われます。主が言われたことではなく、自分が願っていること、この人と一緒にいたいという、さみしい気持ちを満たしたいために、このようなことを言ったことが挙げられます。使徒ペテロが偽教師についての警告を書いているときに、「また彼らは、貪欲なので、作り事のことばをもってあなたがたを食い物にします。(2ペテロ2:3」と言いました。ですから、このことは、すべてのキリスト者に当てはめることができる警告の言葉ではないでしょうか?自分がこのすばらしいクリスチャンといっしょにいたい、この人々の関心を自分に引き寄せたい、牧師さんから好意を得たい、などなど、自分の願望を満たすために、「愛」とか「交わり」などのクリスチャン用語を使用して、引き寄せようとするのです。

 第二に、彼は預言者という任職を主から受けているからこそ、偽預言をした、ということができます。もし預言者でなければ、「あなたといっしょにいたい」という願望だけ伝えたでしょうが、預言者だからこそ、預言に使われる「主は仰せられる」などの言葉を使ってしまったのです。これは、牧師などの教会指導者にとって、またクリスチャンにとって危険な誘惑です。

 そして、神の人がこの偽預言を聞き入れてしまったのは、第一に、彼は自分よりも年上の預言者であったこと、第二に、同じ神のことばを伝えるという職にいるということで、前者では尊敬しなければいけないという思いが働き、後者では仲間ということで気を許したのが原因でしょう。私たちの間でもこのような人間的な打算が働くとき、肉の働きに引きずり込まれます。年上の人を敬うことは大切ですし、同労者の間にある親近感はどちらも大切ですが、主の御霊の中にとどまっていなければ肉の働きなのです。

2C 主の預言 20−25
13:20 彼らが食卓についていたとき、その人を連れ戻した預言者に、主のことばがあったので、13:21 彼はユダから来た神の人に叫んで言った。「主はこう仰せられる。『あなたは主のことばにそむき、あなたの神、主が命じられた命令を守らず、13:22 主があなたに、パンを食べてはならない、水も飲んではならない、と命じられた場所に引き返して、そこであなたはパンを食べ、水を飲んだので、あなたのなきがらは、あなたの先祖の墓には、はいらない。』」

 この預言は、神の人のみならず、老預言者自身も驚き、罪示されたことでしょう。主は、預言者という職務ゆえに、神の人に対する言葉を授けられたのです。

13:23 彼はパンを食べ、水を飲んで後、彼が連れ帰った預言者のために、ろばに鞍を置いた。13:24 その人が出て行くと、獅子が道でその人に会い、その人を殺した。死体は道に投げ出され、ろばはそのそばに立っていた。獅子も死体のそばに立っていた。13:25 そこを、人々が通りかかり、道に投げ出されている死体と、その死体のそばに立っている獅子を見た。彼らはあの年寄りの預言者の住んでいる町に行って、このことを話した。

 主が言われていることに従わないことによって、ライオンに殺されました。けれども、ライオンはそれ以上、その死体を食おうとはせず、ろばもそのそばに立っており、ろばも食い殺そうとしませんでした。これは明らかに、主ご自身が介入されて、神の人に対するさばきを行なわれたことを示すものです。

3C 偽預言の代償 26−32
13:26 その人を途中から連れ帰ったあの預言者は、それを聞いて言った。「それは、主のことばにそむいた神の人だ。主が彼に告げたことばどおりに、主が彼を獅子に渡し、獅子が彼を裂いて殺したのだ。」13:27 そして息子たちに、「ろばに鞍を置いてくれ。」と言ったので、彼らは鞍を置いた。13:28 彼は出かけて行って、道に投げ出されている死体と、その死体のそばに立っているろばと獅子とを見つけた。獅子はその死体を食べず、ろばを裂き殺してもいなかった。13:29 そこで、預言者は、神の人の死体を取り上げ、それをろばに乗せてこの年寄りの預言者の町に持ち帰り、いたみ悲しんで、葬った。13:30 彼がなきがらを自分の墓に納めると、みなはその人のために、「ああ、わが兄弟。」と言って、いたみ悲しんだ。13:31 彼はその人を葬って後、息子たちに言った。「私が死んだら、あの神の人を葬った墓に私を葬り、あの人の骨のそばに私の骨を納めてくれ。13:32 あの人が主の命令によって、ベテルにある祭壇と、サマリヤの町々にあるすべての高き所の宮とに向かって呼ばわったことばは、必ず成就するからだ。」

 老預言者は、神の人を丁重に葬りました。また主ご自身も、このことを尊ばれたことでしょう。ご自分の命令に聞き従わなかったのは罪でしたが、主の命令にしたがって、ヤロブアム王に預言したその業績があります。

 老預言者はひどく悲しんでいますが、偽預言はこのように大きな悲しみをもたらします。そして、大きな被害をもたらします。ここの場合は一人の人の死でありましたが、永遠のいのちを偽預言によって失うことが、たくさんあります。イエス・キリストの御名によってのみ、その十字架と復活のみわざによってのみ、天に入ることができるという福音を、「それは偏狭である」と言って、他にも道があるという人たちがたくさんいます。今や、キリスト教会の牧師などからも、似たような発言を聞きます。けれども、これには大きな代償がともないます。人を永遠の罰の中に閉じ込めるという、恐ろしい代償です。

3B 警告の無視 33−34
 このように神の人は死にましたが、このような犠牲にも関わらず、ヤロブアム王は悔い改めることはしませんでした。

13:33 このことがあって後も、ヤロブアムは悪い道から立ち返ることもせず、引き続いて、一般の民の中から高き所の祭司たちを任命し、だれでも志願する者を任職して高き所の祭司にした。13:34 このことによって、ヤロブアムの家が罪を犯すこととなり、ついには、地の面から根絶やしにされるようになった。

 主はいつも、私たちに立ち返る機会を与えてくださいます。警告を与えてくださいます。けれどもその警告を聞き入れるか、拒むかは一人一人に委ねられています。ヤロブアムは無視するほうを選びました。そして続けて、悪を行ないました。そこで次の章では、ヤロブアムに対する神のさばきの宣告が書かれています。

2A 神の裁き 14
1B ヤロブアム家の滅び 1−20
1C 無意味な変装 1−5
14:1 このころ、ヤロブアムの子アビヤが病気になったので、14:2 ヤロブアムは妻に言った。「さあ、変装して、ヤロブアムの妻だと悟られないようにしてシロへ行ってくれ。そこには、私がこの民の王となることを私に告げた預言者アヒヤがいる。14:3 パン十個と菓子数個、それに、蜜のびんを持って彼のところへ行ってくれ。彼は子どもがどうなるか教えてくれるだろう。」

 ヤロブアムは、ずっと神の預言を無視していましたが、「困ったときの神頼み」はする男だったようです。自分の息子が病気になったので、これが直るかどうか、かつて私について預言したアヒヤに聞いてくれ、と妻に頼んでいます。着物を十二部分に切り裂き、その十をヤロブアムに手渡して、ヤロブアムがイスラエルの王になることを預言した、あのアヒヤです。

14:4 ヤロブアムの妻は言われたとおりにして、シロへ出かけ、アヒヤの家に行ったが、アヒヤは年をとって目がこわばり、見ることができなかった。14:5 しかし、主はアヒヤに言われた。「今、ヤロブアムの妻が子どものことで、あなたに尋ねるために来ている。その子が病気だからだ。あなたはこれこれのことを彼女に告げなければならない。はいって来るときには、彼女は、ほかの女のようなふりをしている。」

 ヤロブアムは愚かなことをしたものです。妻を変装させましたが、そんなことする必要ありませんでした。アヒヤはもう目が見えなくなっていました。けれども、彼がわかっていなかったのは、神の預言者は知識の言葉を持っている、ということです。自分の五感で分からなくても、主の御霊がある人についての知識を授けてくださいます(1コリント12:8参照)。

2C 子へのあわれみ 6−16
14:6 アヒヤは戸口にはいって来る彼女の足音を聞いて言った。「おはいりなさい。ヤロブアムの奥さん。なぜ、ほかの女のようなふりをしているのですか。私はあなたにきびしいことを伝えなければなりません。14:7 帰って行ってヤロブアムに言いなさい。イスラエルの神、主は、こう仰せられます。『わたしは民の中からあなたを高くあげ、わたしの民イスラエルを治める君主とし、14:8 ダビデの家から王国を引き裂いてあなたに与えた。あなたは、わたしのしもべダビデのようではなかった。ダビデは、わたしの命令を守り、心を尽くしてわたしに従い、ただ、わたしの見る目にかなったことだけを行なった。14:9 ところが、あなたはこれまでのだれよりも悪いことをし、行って、自分のためにほかの神々と、鋳物の像を造り、わたしの怒りを引き起こし、わたしをあなたのうしろに捨て去った。』」

 ヤロブアムには、すばらしい約束が用意されていました。祝福が用意されていました。それを台無しにしたのは、ヤロブアム本人です。

 そしてここで、ダビデが主によって、「わたしの命令を守り、心を尽くしてわたしに従い、ただ、わたしの見る目にかなったことだけを行なった。」と評価されていることに注目してください。ダビデは、数多くの過ちと罪を犯しました。けれどもダビデは、心から悔い改め、主を求める人生を歩みました。私たちも、ダビデと同じように主によって正しい者とみなされています。行ないにおいては罪人であり、死と死後のさばきに定められた者ですが、キリストの血によって、あたかも一度の罪を犯したことがないようにされました。

14:10 「だから、見よ、わたしはヤロブアムの家にわざわいをもたらす。ヤロブアムに属する小わっぱから奴隷や自由の者に至るまで、イスラエルにおいて断ち滅ぼし、糞を残らず焼き去るように、ヤロブアムの家のあとを除き去る。14:11 ヤロブアムに属する者で、町で死ぬ者は犬がこれを食らい、野で死ぬ者は空の鳥がこれを食らう。」主がこう仰せられたのです。14:12 さあ、家へ帰りなさい。あなたの足が町にはいるとき、あの子は死にます。14:13 イスラエルのすべてがその子のためにいたみ悲しんで葬りましょう。ヤロブアムの家の者で、墓に葬られるのは、彼だけでしょう。ヤロブアムの家で、彼は、イスラエルの神、主の御心にかなっていたからです。

 ヤロブアムの家の者が立ち滅ぼされるのは、後々のことです。けれども、それが必ず起こることを示すためのしるしとして、今、病床の中にいる子が死にます。けれども、主はこの子にあわれみを示されています。この子だけは、丁重に葬られます。けれどもその他のヤロブアムの家の者は、その死体が道ばたでさらされて、犬や猛禽によって食われていきます。

14:14 主はご自分のためにイスラエルの上にひとりの王を起こされます。彼は、その日、そしてただちに、ヤロブアムの家を断ち滅ぼします。

 ヤロブアムの次の次の王であるバシャによって、このことは実現します。1529節に書いてあります。

14:15 主は、イスラエルを打って、水に揺らぐ葦のようにし、彼らの先祖たちに与えられたこの良い地からイスラエルを引き抜き、ユーフラテス川の向こうに散らされるでしょう。彼らがアシェラ像を造って主の怒りを引き起こしたからです。14:16 ヤロブアムが自分で犯した罪と、彼がイスラエルに犯させた罪のために、主はイスラエルを捨てられるのです。」

 ヤロブアムの罪は、彼個人で終わるものではありませんでした。北イスラエル王国の後に続く王たちが、ヤロブアムの道に歩んで、主の前の前に悪を行なったことが、これから読む列王記の箇所に出てきます。何一つ善い王が出てこなかったのが、北イスラエルの特徴です。ヤロブアムが、これからのイスラエルの道筋を作ってしまった人物と言えるでしょう。

 そして北イスラエルは、ユーフラテス川の向こうに散らされる、とありますが、アッシリヤによって滅ぼされ、捕囚の民となります。

3C 預言の実現 17−20
14:17 ヤロブアムの妻は立ち去って、ティルツァに着いた。彼女が家の敷居に来たとき、その子どもは死んだ。14:18 人々はその子を葬り、全イスラエルは彼のためにいたみ悲しんだ。主がそのしもべ、預言者アヒヤによって語られたことばのとおりであった。

 アヒヤが告げたとおり、ヤロブアムの妻が家に入ったその瞬間に、その子は死にました。また丁重に葬られたことも、実現しています。

14:19 ヤロブアムのその他の業績、彼がいかに戦い、いかに治めたかは、イスラエルの王たちの年代記の書にまさしくしるされている。14:20 ヤロブアムが王であった期間は二十二年であった。彼は先祖たちとともに眠り、その子ナダブが代わって王となった。

 北イスラエルの年代記は現存していませんが、ユダの年代記は歴代誌として残っています。列王記の後に歴代誌がありますが、それです。

2B レハブアムの悪行 21−31
 そして次から、南ユダ王国の話になります。列王記は、このようにほぼ同時期に北と南で起こっていることを、交互に記録しています。

1C アシェラ像 21−24
14:21 ユダではソロモンの子レハブアムが王になっていた。レハブアムは四十一歳で王となり、主がご自分の名を置くためにイスラエルの全部族の中から選ばれた都、エルサレムで十七年間、王であった。彼の母の名はナアマといい、アモン人であった。14:22 ユダの人々は主の目の前に悪を行ない、彼らの先祖たちよりひどい罪を犯して主を怒らせた。14:23 彼らもまた、すべての高い丘の上や青木の下に、高き所や、石の柱や、アシェラ像を立てた。14:24 この国には神殿男娼もいた。彼らは、主がイスラエル人の前から追い払われた異邦の民の、すべての忌みきらうべきならわしをまねて行なっていた。

 前回、レハブハムとその軍が主の預言者の声に聞きしたがった場面が出てきますが、彼の生涯は概ね、主に逆らっていたものでした。彼の母がアモン人であること、そして異教の神々の礼拝とそれにともなう忌み嫌うべき不品行の数々は、彼の父ソロモンを思い起こさせます。ソロモンが数多くの外国人の妻を愛して、外国の神々に仕えました。レハブアムはその結実と言ってもよい子だったのです。

2C 財宝の損失 25−31
14:25 レハブアム王の第五年に、エジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上って来て、14:26 主の宮の財宝、王宮の財宝を奪い取り、何もかも奪って、ソロモンが作った金の盾も全部奪い取った。

 覚えているでしょうか、ソロモンが王であったとき、彼は延べ金で大盾二百を作り、盾三百を作りました(10:16)。このことをシシャクは目をつけていて、そして今奪い取りました。ソロモンがパロの娘を自分の妻としていたことの代償が、ここにも出ています。そしてもちろん、これはレハブアムが犯していた罪のゆえでもあります。

14:27 それで、レハブアム王は、その代わりに青銅の盾を作り、これを王宮の門を守る近衛兵の隊長の手に託した。14:28 王が主の宮にはいるたびごとに、近衛兵が、これを運んで行き、また、これを近衛兵の控え室に運び帰った。

 ソロモンが死んでから十年も経っていないのに、その国は黄金の国から、青銅の国へと帰られてしまいました。

14:29 レハブアムのその他の業績、彼の行なったすべての事、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。14:30 レハブアムとヤロブアムとの間には、いつまでも戦いがあった。

 これは大きな戦争ではなく、南北の国境付近における小競り合いのことです。

14:31 レハブアムは彼の先祖たちとともに眠り、先祖たちとともにダビデの町に葬られた。彼の母の名はナアマといい、アモン人であった。彼の子アビヤムが代わって王となった。

 先に話しましたように、レハブアムの母はアモン人です。

 こうしてヤロブアムの治世とレハブアムの治世を見てきましたが、歴代誌にはレハブアムの晩年について書いてあります。彼は最後にはへりくだって、悔い改めをしています。彼の生涯は、初めは荒々しい専制君主、そして偶像礼拝を行なっていましたが、主の取り扱いで晩年には立ち上がることができました。ヤロブアムはその正反対です。初めは大衆に受け入れられた人気者で出発し、預言者を通して神のすばらしい約束が与えられていたのに、その最後は惨めでした。これはすべて、主の警告に聞き従っているかどうかにかかっています。私たちも、主の警告に耳を傾けましょう。


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