サムエル記第二19−20章 「王への忠誠」

アウトライン

1A ダビデを迎える人たち 19
   1B 民の前に出る王 1−15
      1C ヨアブの叱責 1−7
      2C 焦るイスラエル 8−10
   2B エルサレムに向かう王 11−40
      1C ユダの人々 11−15
      2C シェバ 16−23
      3C メフィボシェテ 24−30
      4C バルジライ 31−40
   3B 激しい口論 41−43
2A よこしまな反逆者 20
   1B 亀裂の始まり 1−2
   2B 滅び 3−22
      1C 平和の時の血 3−13
      2C 知恵の女 14−22
   3B 新しい閣僚 23−26

本文

 サムエル記第二19章を開いてください。19章と20章を学びます、ここでのテーマは、「王への忠誠」です。

1A ダビデを迎える人たち 19
1B 民の前に出る王 1−15
1C ヨアブの叱責 1−7
19:1 そうこうするうちに、ヨアブに、「今、王は泣いて、アブシャロムのために、喪に服しておられる。」という報告がされた。

 前回の学びを思い出してください。マハナイムにいたダビデは、攻めてくるアブシャロムの軍との戦いの結果を聞きたくて、待ちわびていました。ダビデは、自分の息子アブシャロムの命は生かしておきなさい、と家臣に命令していました。けれども、樫の木にぶらさがっているアブシャロムをヨアブが殺しました。それで戦いは終わり、知らせがダビデに届きました。そこでダビデは、その体が痙攣のように震え出し、泣きわめきました。「わが子アブシャロム。わが子よ。ああ、私がおまえに代わって死ねばよかったのに。アブシャロム。わが子よ。わが子よ。(18:33」そしてこの知らせがヨアブに届きました。

19:2 それで、この日の勝利は、すべての民の嘆きとなった。この日、民が、王がその子のために悲しんでいる、ということを聞いたからである。19:3 民はその日、まるで戦場から逃げて恥じている民がこっそり帰るように、町にこっそり帰って来た。

 普通は、戦いに勝てばみなで喜び祝います。ダビデがゴリアテを打ち、イスラエルに大勝利がもたらされたとき、女たちが出てきて、タンバリンを打ちながら、踊り歌ったことを思い出せるでしょうか?そのように、町中こぞって喜び叫びます。けれどもダビデが悲しみに沈んでいるということで、その喜びは嘆きとなり、民はこっそりマハナイムの町に帰ってこなければいけなくなりました。

19:4 王は顔をおおい、大声で、「わが子アブシャロム。アブシャロムよ。わが子よ。わが子よ。」と叫んでいた。19:5 ヨアブは王の家に行き、王に言った。「あなたは、きょう、あなたのいのちと、あなたの息子、娘たちのいのち、それに、あなたの妻やそばめたちのいのちを救ったあなたの家来たち全部に、きょう、恥をかかせました。19:6 あなたは、あなたを憎む者を愛し、あなたを愛する者を憎まれるからです。あなたは、きょう、隊長たちも家来たちも、あなたにとっては取るに足りないことを明らかにされました。今、私は知りました。もしアブシャロムが生き、われわれがみな、きょう死んだのなら、あなたの目にかなったのでしょう。」

 王の意向に反してアブシャロムを打ち殺したヨアブですが、王に対してさらに強気に出ています。王よ、あなたは王としてやってはいけないことをやっています、と叱責しています。

19:7 それで今、立って外に行き、あなたの家来たちに、ねんごろに語ってください。私は主によって誓います。あなたが外においでにならなければ、今夜、だれひとりあなたのそばに、とどまらないでしょう。そうなれば、そのわざわいは、あなたの幼いころから今に至るまでにあなたに降りかかった、どんなわざわいよりもひどいでしょう。」

 あなたの民はみな、このことによってあなたから離れていくかもしれません、ということを言っています。

2C 焦るイスラエル 8−10
19:8 それで、王は立って、門のところにすわった。人々がすべての民に、「見よ。王は門のところにすわっておられる。」と知らせたので、すべての民は、王の前にやって来た。一方、イスラエル人は、おのおの自分たちの天幕に逃げ帰っていた。

 ダビデは門のところ、つまり町の役所のところにやって来て、みなの前で出てきました。ヨアブの助言、叱責を聞きました。そのことで、アブシャロムのほうについていたイスラエルの人々が、混乱して、どうすれば良いかわからなくなりました。

19:9 民はみな、イスラエルの全部族の間で、こう言って争っていた。「王は敵の手から、われわれを救い出してくださった。王はわれわれをペリシテ人の手から助け出してくださった。ところが今、王はアブシャロムのために国外に逃げておられる。19:10 われわれが油をそそいで王としたアブシャロムは、戦いで死んでしまった。それなのに、あなたがたは今、王を連れ戻すために、なぜ何もしないでいるのか。」

 いったいだれが王なのか?王不在になってしまったではないか?ダビデ王が私たちを敵から救い出してくださって、アブシャロムは死んでしまったのに、私たちはダビデをまたエルサレムに連れ戻さなければいけないではないか、と話し合っています。

2B エルサレムに向かう王 11−40
1C ユダの人々 11−15
19:11 ダビデ王は祭司ツァドクとエブヤタルに人をやって言わせた。「ユダの長老たちにこう言って告げなさい。『全イスラエルの言っていることが、ここの家にいる王の耳に届いたのに、あなたがたは、なぜ王をその王宮に連れ戻すのをためらっているのか。19:12 あなたがたは、私の兄弟、私の骨肉だ。それなのに、なぜ王を連れ戻すのをためらっているのか。』」

 イスラエル人たちが、ダビデをエルサレムに連れ戻す話が、ダビデの耳に入りました。そこでダビデは、ユダの人々がなぜエルサレムに自分たちの王を連れ戻すのをためらっているのか、と催促しています。ユダ族はダビデの近親者たちだからです。

19:13 またアマサにも言わなければならない。『あなたは、私の骨肉ではないか。もしあなたが、ヨアブに代わってこれからいつまでも、私の将軍にならないなら、神がこの私を幾重にも罰せられるように。』」

 アマサは、アブシャロムのほうについていた将軍でした。にも関わらず、ダビデは彼を自分の将軍にしようとしています。これはアマサを自分に取り入ることによって、さらにイスラエルの人々が自分についてくる、という計算があったのでしょう。以前、サウルの将軍であったアブネルがダビデのところに来たときに、彼の申し出を受け入れたようにです。そしてもう一つ、ダビデはヨアブがアブシャロムを打ったことをすでに聞いていたのでしょう。ヨアブがこれ以上、大きな力を持つことを彼は望まなかったのでしょう。

19:14 こうしてダビデは、すべてのユダの人々を、あたかもひとりの人の心のように自分になびかせた。ユダの人々は王のもとに人をやって、「あなたも、あなたの家来たちもみな、お帰りください。」と言った。

 アブシャロムの死後、これだけ早く、ユダの人々が王のもとに戻ってきました。主がふたたび、ダビデを王としてイスラエル国を回復させようとしておられることを見ます。

19:15 そこで王は帰途につき、ヨルダン川に着くと、ユダの人々は、王を迎えてヨルダン川を渡らせるためにギルガルに来た。

 ギルガルは、以前ヨシュアがヨルダン川を渡って宿営したところであり、それ以後も戦争をするときの拠点となりました。そこにユダの人たちがやって来て、王を迎える準備をしました。

2C シェバ 16−23
19:16 バフリムの出のベニヤミン人、ゲラの子シムイは、ダビデ王を迎えようと、急いでユダの人々といっしょに下って来た。

 覚えていますか、シムイは王がエルサレムから逃げているときに、彼の横に平行に歩いていき、ダビデ王をののしった人であります。ダビデの部下アビシャイが、殺しましょうと提案しましたが、ダビデはすべてをゆだねて、「これは主が行なわれていることだ。そして主がもしかしたら、私の心を知って、こののろいを幸せに変えてくださるかもしれない。」と言いました。そして今、シムイがやって来ています。

19:17 彼は千人のベニヤミン人を連れていた。サウル家の若い者ツィバも、十五人の息子、二十人のしもべを連れて、王が渡る前にヨルダン川に駆けつけた。

 シムイはベニヤミン族の中で影響力を持っていた人のようです。千人のベニヤミン人を連れています。そしてメフィボシェテのしもべツィバも、やって来ています。

19:18 そして彼は、王の家族を渡らせるために渡しを渡って行き、王が喜ぶことをした。ゲラの子シムイも、ヨルダン川を渡って行って、王の前に倒れ伏して、19:19 王に行った。「わが君。どうか私の咎を罰しないでください。王さまが、エルサレムから出て行かれた日に、このしもべが犯した咎を、思い出さないでください。王さま。心に留めないでください。19:20 このしもべは、自分の犯した罪を認めましたから、ご覧のとおり、きょう、ヨセフのすべての家に先立って、王さまを迎えに下ってまいりました。」

 シムイは自分の罪を認めました。自分の犯した罪を認めた、と言っています。聖書の中で、数多く、自分の罪を認めることの大切さについて書いています。私たちは罪を隠そうとしますが、それを言い表わして、捨てるなら、繁栄するとの約束が箴言に書かれています。シムイがしたことは罪でした。彼は弁解することなく、その罪を言い表しました。これはちょうど、私たちがキリストに対して罪を犯したなら、キリストのみことばの主権を認めて、罪を犯したことを言い表す必要があることを教えてくれます。

19:21 ツェルヤの子アビシャイは口をはさんで言った。「シムイは、主に油そそがれた方をのろったので、そのために死に値するのではありませんか。」

 アビシャイは、シムイを殺させてください、と言った人物です。今も彼を死刑にすべきではありませんか、と言っています。

19:22 しかしダビデは言った。「ツェルヤの子らよ。あれは私のことで、あなたがたには、かかわりのないことだ。あなたがたは、きょう、私に敵対しようとでもするのか。きょう、イスラエルのうちで、人が殺されてよいだろうか。私が、きょう、イスラエルの王であることを、私が知らないとでもいうのか。」19:23 そして王はシムイに、「あなたを殺さない。」と言って彼に誓った。

 ダビデは、シムイののろいを、自分が犯した罪と関連させて受け入れていました。自分の罪によって、これらすべてのわざわいが起こっているのだから、だから私と神との間のことだ。彼を殺す必要はない、と考えました。それに、今また、イスラエルの中で血が流されるのはふさわしくありません。それで、シムイを殺さないことに決めました。ダビデの、神を礼拝する心と、平和を求める心をここで見ることができます。

3C メフィボシェテ 24−30
19:24 サウルの子メフィボシェテは、王を迎えに下って来た。彼は、王が出て行った日から無事に帰って来た日まで、自分の足の手入れもせず、爪も切らず、ひげもそらず、着物も洗っていなかった。

 メフィボシェテが出てきました。ダビデが逃げたとき、メフィボシェテに仕えていたツィバはダビデのところに来ましたが、メフィボシェテは来ませんでした。そしてツィバは、メフィボシェテが、「きょう、イスラエルの家は、私の父の王国を私に返してくれる。」と言った、とダビデに言いました。そのことばを信じたダビデは、「メフィボシェテの地所や財産はみなあなたのものだ。」と判断を下しました。けれども、それは早まった判断でした。ツィバがメフィボシェテのことを中傷していたのです。

中傷という罪は、現在、インターネットという手段によって広がっています。人の言説の揚げ足を取って、偽りの情報を流している者たちは、日本だけでなく、米国でもどこにもいます。私も中傷メールをたくさん受け取ります。10年ほど前に起こったであろう教会内で起こった出来事について、教会の宣教師や関係者に手当たりしだいすべてに送っているであろう、メールです。昔と今は変わりません。

19:25 彼が王を迎えにエルサレムから来たとき、王は彼に言った。「メフィボシェテよ。あなたはなぜ、私といっしょに来なかったのか。」19:26 彼は答えた。「王さま。私の家来が、私を欺いたのです。このしもべは『私のろばに鞍をつけ、それに乗って、王といっしょに行こう。』と思ったのです。しもべは足なえですから。19:27 ところが彼は、このしもべのことを、王さまに中傷しました。しかし、王さまは、神の使いのような方です。あなたのお気に召すようにしてください。19:28 私の父の家の者はみな、王さまから見れば、死刑に当たる者に過ぎなかったのですが、あなたは、このしもべをあなたの食卓で食事をする者のうちに入れてくださいました。ですから、この私に、どうして重ねて王さまに訴える権利がありましょう。」

 メフィボシェテの姿勢は、常に感服させられます。彼は、このときにおいても、自分は死刑にされて当然の身である、だから何を取られても私は構いません。あなたは、私が王の食卓で食事させるという恵みを与えられたのですから、これだけで十分です、と言っています。これを、まことの王キリストに言い変えるならば、「私の物理的な財産はなくなっても構いません。私は死んで、地獄にいかなければいけない身でしたのに、あなたが恵んでくださり、あなたとの交わりの中に入れてくださったのですから。」という意味です。私たちが覚えておかなければいけない立場です。

19:29 王は彼に言った。「あなたはなぜ、自分の弁解をくり返しているのか。私は決めている。あなたとツィバとで、地所を分けなければならない。」19:30 メフィボシェテは王に言った。「王さまが無事に王宮に帰られて後なら、彼が全部でも取ってよいのです。」

 ダビデはツィバに、すべての地所を与えると約束しました。けれども、彼が言ったことが嘘であることがわかると、半分の地所をメフィボシェテに返しました。嘘であっても、ツィバに約束したのですから、すべてを取り消すことはしませんでした。

4C バルジライ 31−40
 再び、また別の人がダビデを迎えにやって来ます。19:31 ギルアデ人バルジライは、ログリムから下って、ヨルダン川で王を見送るために、王といっしょにヨルダン川まで進んで来た。19:32 バルジライは非常に年をとっていて八十歳であった。彼は王がマハナイムにいる間、王を養っていた。彼は非常に富んでいたからである。

 マハナイムにダビデたちが避難したとき、彼は自分の財産をもって、ダビデに支援物資を送りました。彼は自分の莫大な富を、彼のために使ってもらいたいと思ったのです。彼は良い管理人でした。自分のためではなく、人の益のために財産を用いました。「天に宝を積みなさい」と主イエスが言われたのに通じるものがあります。

19:33 王はバルジライに言った。「私といっしょに渡って行ってください。エルサレムで私のもとであなたを養いたいのです。」19:34 バルジライは王に言った。「王といっしょにエルサレムへ上って行っても、私はあと何年生きられるでしょう。19:35 私は今、八十歳です。私はもう善悪をわきまえることができません。しもべは食べる物も飲む物も味わうことができません。歌う男や女の声を聞くことさえできません。どうして、このうえ、しもべが王さまの重荷になれましょう。19:36 このしもべは、王とともにヨルダン川を渡って、ほんの少しだけまいりましょう。それ以上、王はどうして、そのような報酬を、この私にしてくださらなければならないのでしょうか。」

 バルジライは、王の申し出を断わっています。けれどもその代わり、自分のしもべに良くしてほしいとお願いします。

19:37 このしもべを帰らせてください。私は自分の町で、私の父と母の墓の近くで死にたいのです。しかしここに、あなたのしもべキムハムがおります。彼が、王さまといっしょに渡ってまいります。どうか彼に、あなたの良いと思われることをなさってください。」19:38 王は言った。「キムハムは私といっしょに渡って来てよいのです。私は、あなたが良いと思うことを彼にしましょう。あなたが、私にしてもらいたいことは何でも、あなたにしてあげましょう。」19:39 こうして、みなはヨルダン川を渡った。王も渡った。それから、王はバルジライに口づけをして、彼を祝福した。バルジライは自分の町へ帰って行った。19:40 王はギルガルへ進み、キムハムもいっしょに進んだ。ユダのすべての民とイスラエルの民の半分とが、王といっしょに進んだ。

 バルジライのしもべキムハムは、王といっしょに進みました。このときにはすでに、イスラエルの民とユダの民のどちらもがダビデのところに到着して、いっしょに付いて行っています。

3B 激しい口論 41−43
19:41 するとそこへ、イスラエルのすべての人が王のところにやって来て、王に言った。「われわれの兄弟、ユダの人々は、なぜ、あなたを奪い去り、王とその家族に、また王といっしょにダビデの部下たちに、ヨルダン川を渡らせたのですか。」19:42 ユダのすべての人々はイスラエルの人々に言い返した。「王は、われわれの身内だからだ。なぜ、このことでそんなに怒るのか。いったい、われわれが王の食物を食べたとでもいうのか。王が何かわれわれに贈り物をしたとでもいうのか。」19:43 イスラエルの人々はユダの人々に答えて言った。「われわれは、王に十の分け前を持っている。だからダビデにも、あなたがたよりも多くを持っているはずだ。それなのに、なぜ、われわれをないがしろにするのか。われわれの王を連れ戻そうと最初に言いだしたのは、われわれではないか。」しかし、ユダの人々のことばは、イスラエルの人々のことばより激しかった。

 非常に激しい言い争いが起こりました。どちらがダビデのものか、ということで言い争っていました。イスラエル十部族は、「我々の分け前はあなたがたの十倍もある。なぜないがしろにするのか?」と難癖をつけ、ユダの人たちは、「ダビデはわれわれの近親者だ」と言っています。ダビデ自身にとっては、どちらも神の民です。けれども、この激しい争いは、キリスト教会内でも起こっています。コリントにある教会は、我々はパウロにつく、私はペテロにつく、いやバルナバに、いや私だけがキリストにつく者だ、と仲間割れをしていました(1コリント1章参照)。けれども、まことの主である王であるイエス・キリストは、そのような狭量のお方ではありません。私たちは、御体の部分にしか過ぎないのです。

2A よこしまな反逆者 20
1B 亀裂の始まり 1−2
20:1 たまたまそこに、よこしまな者で、名をシェバという者がいた。彼はベニヤミン人ビクリの子であった。彼は角笛を吹き鳴らして言った。「ダビデには、われわれのための割り当て地がない。エッサイの子には、われわれのためのゆずりの地がない。イスラエルよ。おのおの自分の天幕に帰れ。」20:2 そのため、すべてのイスラエル人は、ダビデから離れて、ビクリの子シェバに従って行った。しかし、ユダの人々はヨルダン川からエルサレムまで、自分たちの王につき従って行った。

 ダビデをエルサレムに連れて行くのに、ユダの人々がイスラエルの人々より優勢になっていました。そのちょっとした分裂を利用して、シェバというよこしまな者がイスラエルを自分のものにしようとしました。これは、ずっと後に実際に起こります。ダビデの息子ソロモンの死後、ソロモンの息子レハブアムが治めるユダと、ソロモンの家臣であったヤロブアムが治めるイスラエル十部族に分裂したのです。今、その萌芽をシェバによって見ることができます。

2B 滅び 3−22
1C 平和の時の血 3−13
20:3 ダビデはエルサレムの自分の王宮にはいった。王は、王宮の留守番に残しておいた十人のそばめをとり、監視つきの家を与えて養ったが、王は彼女たちのところには通わなかった。それで彼女たちは、一生、やもめとなって、死ぬ日まで閉じ込められていた。

 悲しい罪の結果をここに見ます。ダビデは、彼女たちを殺したりするのは拒みました。けれども、自分の息子によって彼女たちは汚されました。だからと言って、他の人に彼女たちを与えれば、その男が力を持つことになります。ダビデが考えた最善の方法は、彼女たちを養いますが、どの男にも触れさせない、という処置でした。けれどもこれはもちろん、元はといえばダビデの過ちで起こったことであり、アブシャロムのうぬぼれによって起こったことです。罪を犯すと、必ずこのように被害にあう人たちがいます。

20:4 さて、王はアマサに言った。「私のために、ユダの人々を三日のうちに召集し、あなたも、ここに帰って来なさい。」20:5 そこでアマサは、ユダの人々を召集するために出て行ったが、指定された期限に間に合わなかった。

 自分の将軍にしたアマサに対して、シェバの反逆を鎮圧すべくユダの人々を召集するように命じます。けれども、ユダの人々がアマサが気に入らなかったのか、彼の召集の呼びかけにすぐに応答しなかったのだろうと思われます。ダビデがいった期限に間に合いませんでした。

20:6 ダビデはアビシャイに言った。「今や、ビクリの子シェバは、アブシャロムよりも、もっとひどいわざわいを、われわれにしかけるに違いない。あなたは、私の家来を引き連れて彼を追いなさい。でないと彼は城壁のある町にはいって、のがれてしまうだろう。」20:7 それで、ヨアブの部下と、ケレテ人と、ペレテ人と、すべての勇士たちとは、アビシャイのあとに続いて出て行った。彼らはエルサレムを出て、ビクリの子シェバのあとを追った。

 アマサが戻ってこないので、緊急を要したこの戦いのために、自分の家臣アビシャイにシェバの追跡を命令します。そしてアビシャイの指揮の中にヨアブもいました。けれどもヨアブが、再びダビデの心を傷つけるようなことをしでかします。

20:8 彼らがギブオンにある大きな石のそばに来たとき、アマサが彼らの前にやって来た。

 アマサは遅れてエルサレムに戻ってきたのでしょう。遅刻したけれども共に追跡に行きたいと思いました。それでアビシャイのところにやって来ました。

20:8bヨアブは自分のよろいを身に着け、さやに納めた剣を腰の上に帯で結びつけていた。彼が進み出ると、剣が落ちた。20:9 ヨアブはアマサに、「兄弟。おまえは元気か。」と言って、アマサに口づけしようとして、右手でアマサのひげをつかんだ。20:10 アマサはヨアブの手にある剣に気をつけていなかった。ヨアブが彼の下腹を刺したので、はらわたが地面に流れ出た。この一突きでアマサは死んだ。それからヨアブとその兄弟アビシャイは、ビクリの子シェバのあとを追った。

ヨアブはまたしても、流血の罪を犯しました。相手のひげをつかむのは、挨拶するときの抱擁と同じです。そして、剣をわざと落としています。アマサをだまして、彼を殺しました。この出来事と、かつてのサウルの将軍アブネルを同じようにして殺した罪のために、晩年ダビデはヨアブをきちんとさばくようにと、息子ソロモンに言い残します。

20:11 そのとき、ヨアブに仕える若い者のひとりがアマサのそばに立って言った。「ヨアブにつく者、ダビデに味方する者は、ヨアブに従え。」20:12 アマサは大路の真中で、血まみれになってころがっていた。この若い者は、民がみな立ち止まるのを見て、アマサを大路から野原に運んだ。そのかたわらを通る者がみな、立ち止まるのを見ると、彼の上に着物を掛けた。20:13 アマサが大路から移されると、みなヨアブのあとについて進み、ビクリの子シェバを追った。

 ヨアブの一突きによって、アマサは即死しなかったようです。はらわたが出て、道の真ん中でもだえていました。ユダの戦士たちにとって、自分たちの将軍が倒されているのはあまりにも衝撃的で、驚愕したことでしょう。けれども、そのときにある若者がヨアブにつけと掛け声をかけて、それで追跡を続けます。

2C 知恵の女 14−22
20:14 シェバはイスラエルの全部族のうちを通って、アベル・ベテ・マアカへ行った。すべてのベリ人は集まって来て、彼に従った。

 アベルはガリラヤ地方にある町です。

20:15 しかし、人々はアベル・ベテ・マアカに来て、彼を包囲し、この町に向かって塁を築いた。それは外壁に向かって立てられた。ヨアブにつく民はみな、城壁を破壊して倒そうとしていた。20:16 そのとき、この町から、ひとりの知恵のある女が叫んだ。「聞いてください。聞いてください。ヨアブにこう言ってください。ここまで近づいてください。あなたにお話ししたいのです。」20:17 ヨアブが彼女のほうに近づくと、この女は、「あなたがヨアブですか。」と尋ねた。彼は答えた。「そうだ。」すると女は言った。「このはしためのことばを聞いてください。」彼は答えた。「私が聞こう。」20:18 すると女はこう言った。「昔、人々は『アベルで尋ねてみなければならない。』と言って、事を決めるのがならわしでした。20:19 私は、イスラエルのうちで平和な、忠実な者のひとりです。あなたは、イスラエルの母である町を滅ぼそうとしておられます。あなたはなぜ、主のゆずりの地を、のみ尽くそうとされるのですか。」

 昔、この町は、難しい諸問題を知恵をもって解決できた場所として、イスラエルの間で用いられていたようです。争いが起ころうとしても、この町で協議すれば平和裏に解決しました。にも関わらず、あなたはこの町を滅ぼされるのですか、と女がヨアブに聞いています。

20:20 ヨアブは答えて言った。「絶対にそんなことはない。のみ尽くしたり、滅ぼしたりするなど、とてもできないことだ。20:21 そうではない。実はビクリの子で、その名をシェバというエフライムの山地の出の男が、ダビデ王にそむいたのだ。この男だけを引き渡してくれたら、私はこの町から引き揚げよう。」

 ヨアブは実際的な男です。シェバが死ねばそれで良かったのです。

20:21するとこの女はヨアブに言った。「では、その男の首を城壁の上からあなたのところに投げ落としてごらんにいれます。」20:22 この女はその知恵を用いてすべての民のところに行った。それで彼らはビクリの子シェバの首をはね、それをヨアブのもとに投げた。ヨアブが角笛を吹き鳴らしたので、人々は町から散って行って、めいめい自分の天幕へ帰った。ヨアブはエルサレムの王のところに戻った。

 この女はたしかに知恵ある人です。すぐに判断して、人々を説得して、シェバの首をはねさせることによって平和を保ちました。そしてヨアブは帰っていきます。ダビデはアマサを将軍に、そしてアビシャイを指揮官にしてシェバの追跡を命じましたが、帰るときはヨアブが先頭に立っています。

3B 新しい閣僚 23−26
 そして新しい閣僚も、ヨアブが中心になっています。

20:23 さて、ヨアブはイスラエルの全軍の長であった。エホヤダの子ベナヤはケレテ人とペレテ人の長。20:24 アドラムは役務長官。アヒルデの子ヨシャパテは参議。20:25 シェワは書記。ツァドクとエブヤタルは祭司。20:26 ヤイル人イラもダビデの祭司であった。

 ダビデは、実際的な男ヨアブを取り除くことはできませんでした。息子ソロモンのときに彼は殺されます。ここに、後に来られるイエス・キリストの心は、実際的な物事の考えとは違うことを見ることができます。ダビデは、平和を求めました。正義は求めましたが、平和を脅かす要素があるときにのみその正義を行使しました。そして、罪を犯した者に対して恵み深く接しています。ダビデは、心の人、神を礼拝する人でしたが、ヨアブは目の前にある課題を次々と処理する男でした。イエスの弟子にも、高価な香油をつかってイエスに注いだマリヤに対して、「こんな高価なものを無駄にして、貧しい人に施すことができたのではないか」と咎めた弟子がいました。イエスが求めておられるのは、心であって、計算ではありませんでした。

 その他にも、ダビデを迎えた人々から教訓として学ぶことができます。シムイの罪の告白、メフィボシェテのへりくだり、バルジライの財産の管理、そしてイスラエルの間の仲たがいなどです。すべて一人の王ダビデに対してどうするのか、に対するさまざまな反応です。私たちの主、イエス・キリストに対して、私たちはどのように応答しているでしょうか?


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