エゼキエル書38章 「ゴグとマゴグ」

アウトライン

1A 北の果てからの襲撃 1−6
2A 安心しているイスラエル 7−16
   1B 終わりの日 7−9
   2B 分捕り 10−13
   3B 地を覆う雲 14−16
3A 神の怒り 17−23

本文

 今からエゼキエル書38章を学びます。38章そして39章ではイスラエルの「安全の回復」を読みます。36章は「土地の回復」、37章は「国の回復」でした。エゼキエルは今、エルサレムの町がバビロンによって破壊された、その知らせを聞くや否や預言をしています。33章から始まっています。そしてそれは、イスラエルの山々そのものが牧場であり、神ご自身を羊飼いとなられるという約束です。

 そして36章では、神は、イスラエルをひどく憎んで、バビロンによってユダヤ人が捕え移された後の地を我が物にしているエドムに強く反応され、それでイスラエルの山々に木を生えさせ、実を結ばせ、町々を建て、人を増やすと約束されました。37章では、バビロンでの捕囚の民が、まるで自分自身が干からびた骨であるかのように、打ちひしがれて、絶望しているのに反応して、この人々を国として復興することを約束されました。

 こうして土地が回復し、国が復興したのですが、その豊かで安全な国に対して、終わりの日にゴグを筆頭とする多くの国々がイスラエルを雲のように攻め上ってくるという預言が38章と39章にあります。

 私たちは、36章の土地の回復が19世紀後半から始まったシオニズム運動によってその一部が実現したことを学びました。そして37章で、国の復興が1948年のイスラエル建国によって一部実現したことを学びました。けれども、まだ実現していない部分があり、それはイスラエル人が神の御霊によって新しく生まれることです。まさに彼らは偶像によってこの地とまた自分の身を汚したので、国は破壊され、土地から引き抜かれたのです。この肝心の霊的な部分がまだ復興していないのです。

 徐々にではありますが、イスラエルの人々の中に、確かに主は生きておられると認める人が出てきています。けれども、この奇跡的な土地の回復をもってしても、また奇跡的な国の復興を見ても、なお主を認められない人々が大勢いるのです。そこで主は、ちょうど出エジプト記で行なわれたのと似たことを行なわれます。出エジプト記において、主はこれでもか、これでもかというばかりにエジプトに災いを下し、最後、紅海を分け、そこを通らせることによって、ご自分がヤハウェであることを示され、イスラエルは神とモーセを信じました。同じように、主は、豊かな地、安全になっているところに、絶体絶命の危機を、ゴグを通して与えられ、そしてゴグを打ち砕かれることによって、イスラエルの民、また諸国の民が、この方こそまことの神、まことの主であることを認めるように仕向けられます。

 もう一度思い出してください、エゼキエル書で繰り返し出てくる言い回しは、「わたしが主であることを知ろう。」です。主はこのことを通して、ご自分の栄光を世界に対して見せつけられます。

1A 北の果てからの襲撃 1−6
38:1 さらに、私に次のような主のことばがあった。38:2 「人の子よ。メシェクとトバルの大首長であるマゴグの地のゴグに顔を向け、彼に預言して、38:3 言え。神である主はこう仰せられる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。今、わたしは、あなたに立ち向かう。38:4 わたしはあなたを引き回し、あなたのあごに鉤をかけ、あなたと、あなたの全軍勢を出陣させる。それはみな武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。38:5 ペルシヤとクシュとプテも彼らとともにおり、みな盾とかぶとを着けている。38:6 ゴメルと、そのすべての軍隊、北の果てのベテ・トガルマと、そのすべての軍隊、それに多くの国々の民があなたとともにいる。

 ここに、イスラエルを取り囲み、それを攻め取ろうとする軍隊の構成が書かれています。首謀者は、「メシェクとトバルの大首長であるマゴグの地のゴグ」です。そして、ゴグと連携して、ペルシヤ、クシュ、プテが出陣し、またゴメル、ベテ・トガルマも参戦します。その他、多くの国民がります。

 これらの国々はいったいどこかなのかと皆さん不思議がられるかもしれません。二つの特徴があります。一つは、主に北の果てにある国々だということです。15節に「北の果てのあなたの国から」とあります。どこから見て北かといいますと、もちろんイスラエルから見て北です。

 そして、もう一つの特徴は、聖書に啓示されている「地の果て」と呼ばれるところ、イスラエル周囲の諸国ではなく、もっと先にある国々が主に関わっていることです。ペルシヤは今のイランです。けれどもイランの手前にイラクがあるし、その手前にはヨルダンがあります。けれども、当時のヨルダンであるアモン、モアブ、エドムはここに出てきません。当時のイラクであるバビロンも出てきません。

 クシュはエチオピヤで、今のスーダンとエチオピヤの所です。プテはリビアでありますが、北アフリカですね。けれどもエジプトがいません。もっと、もっと遠いところです。

 そしてゴメルとベテ・トガルマは今のトルコにいたであろう人々であり、メシェクとトバル、そしてマゴグは黒海とカスピ海周辺を中心にして生きていました。今のロシアの南部とその下にあるグルジアやウクライナ、また「〜スタン」とついている、旧ソ連南部のイスラム諸国です。けれども、北と言えばその手前にはシリヤがあり、レバノンがあります。シリヤはイスラエルの長年の宿敵ですが、それでもここに出てきません。

 なぜならこの預言の特徴は、隣接する周囲の国々が戦争をすることではなく、もっと大きな、世界的な規模で、豊かになって平穏に暮らしているイスラエルに対して、それを貪ろうとする企みを描いているからです。

 ここの国々の多くがすでにエゼキエル書に出てきています。27章に、世界を相手にして貿易をしているツロの町の交易相手として、ベテ・トガルマ、トバル、メシェクが出てきて、また後で出てくるタルシシュも出てきます。そしてエジプトがバビロンに倒されて、陰府に下った時にそこには既にメシェクとトバルがいました。そしてノアの時代、洪水が起こった後に、世界に民族が分かれ出たことを創世記10章が伝えています。ですから、世界的規模でイスラエルを攻めようという動きがここエゼキエル38章なのです。

 周辺諸国との戦いももちろん預言されています。代表的なのは詩篇83篇です。「彼らは言っています。『さあ、彼らの国を消し去って、イスラエルの名がもはや覚えられないようにしよう。』彼らは心を一つにして悪だくみをし、あなたに逆らって、契約を結んでいます。それは、エドムの天幕の者たちとイシュマエル人、モアブとハガル人、ゲバルとアモン、それにアマレク、ツロの住民といっしょにペリシテもです。アッシリヤもまた、彼らにくみし、彼らはロトの子らの腕となりました。セラ(4-8節)」アラブが「国を消し去って」という言葉は、アラブ諸国のお決まりの掛け言葉になりました。ユダヤ人を地中海に投げ込んでやる、と威勢をあげていましたし、今もあげています。

 今読んだところに出てこない国々もありますが、例えばシリア、昔はアラムでしたが、アラムの首都ダマスコは倒れて、廃墟となるという預言があります。「見よ。ダマスコは取り去られて町でなくなり、廃墟となる。(イザヤ17:1」エジプトについては、それが女のように弱くなり、最後はイスラエルの支配下に入り、イスラエルの神、主を受け入れるという預言がイザヤ書19章にあります。さらにバビロンはイザヤ書13,14章によると攻められて滅びる、そして黙示録17,18章によると同じように滅びることが定められています。

 ですから、周辺諸国への預言はあるのです。けれどもここエゼキエル書では、そうした地域的な紛争ではなく、かなり広範囲の戦いを指していることを知らなければいけません。

 ユダヤ人が世界から帰還してイスラエルが建国すると、周辺アラブ諸国がすぐに反応して中東戦争が始まりました。けれどもその戦争の背後で世界が何かを企むかのように蠢いていました。イスラエルが数々の戦争で連勝し、この国が強くなり、豊かになったその時、マゴグの地のゴグが多くの国々と連合してイスラエルを攻めようとする姿を、実は、今の時代に私たちは見ることができるのです。

 もう一度、一つ一つの国々を見てみましょう。というか、もっとも大事な「ゴグ」についての説明をしなければいけません。日本語訳で「大首長」となっているところは、英語ではそのまま固有名詞として「ロシュ(あるいはロシ)」となっています。日本語の文語訳ではそのようになっています。読んでみます、「ロシ、メセクおよびトバルの君たるマゴグの地の王ゴグ」です。

 確かに「ロシュ」は、イスラエルの新年である「ロシュ・ハシャナ」で分かるように、聖書では「頭(かしら)」という意味で使われています。けれども、古代の文献の中ではロシュを一つの民族また国として扱っており、ヘブル語をギリシヤ語に翻訳した七十人訳には「ロシュ」と訳されています。実は新改訳聖書にもロシュは出てきており、イザヤ書の最後にこう書いてあります。「わたしは彼らの中にしるしをおき、彼らのうちののがれた者たちを諸国に遣わす。すなわち、タルシシュ、プル、ルデ、メシェク、ロシュ、トバル、ヤワン、遠い島々に。これらはわたしのうわさを聞いたこともなく、わたしの栄光を見たこともない。(66:19 

 そしてこのロシュは、黒海とカスピ海の北の辺りの地域であることが古代の文献から分かっています。つまりロシアです。そしてマゴグですが創世記102節には、ヤペテの息子の一人です。主に地中海、そしてヨーロッパに散っていった人々ですが、ヨセフスなど、さまざまな古代資料から「スキタイ人」であることが分かっています。

  今、アメリカで白人のことを「コケージアン(Caucasian)」と呼びますが、スキタイ人はインド・ヨーロッパ系の民族でコーカサスを中心に、ロシア南部地方のかなり広い範囲にいた遊牧騎馬民族国家であったと言われています。聖書には、コロサイ311節に「そこには、ギリシヤ人とユダヤイ人、割礼の有無、未開人、スクテヤ人、奴隷と自由人というような区別はありません。」とパウロが言っていますが、「スクテヤ人」がそれです。パウロは彼らを未開人の隣に置いていますが、かなり獰猛な恐ろしい民族だったようで、征服した民のしゃれこうべを使って、その血を飲んだという記述もあります。ロシアのモスクワ博物館に行けば、スキタイ人の展示があるそうで、ロシア、また今の南にある国々に分布していたことは確かです。興味深いことに、中国の万里の長城はアラビア語で「アル・マゴグの壁」と呼ばれています。マゴグ、スキタイ人からの進入を防ぐ壁だったからです。

 この章で出てくる彼らの武器は「馬」「弓」「槍」「剣」ですが、これらはスキタイ人の姿をよく表しています。けれども、今ではかつてスキタイ人がいたところにイスラム教になった旧ソ連の諸国があり、彼らは今でも馬や剣を使っています。彼らが西洋人を剣で首切りの刑に処しますが、それは今でも行なっていることであり、そして効果的です。

 そしてメシェクとトバルですが、マゴグと並んでヤペテの息子として出ています。地理的には先ほど話したように、トルコの北東、黒海とカスピ海の辺りにいた人々です。

 非常に興味深いことに今、私たちはロシアの台頭を見ています。もちろんロシアはソ連邦の時から強い国でしたが、プーチンが首相になってからは「母なるロシア」を復興すべく、独裁的な、拡張主義的な強国にする野心を持っています。20088月に、グルジアにロシアが侵攻しましたが、そこはマゴグ及びメシェクとトバルがあったと言われる地域です。

 私たちは、イスラエルが独立宣言をしたちょうどその日に、周辺のアラブ諸国が攻め入った第一次中東戦争を知っています。その後、イスラエルとエジプトの間のシナイ作戦、そして、エジプト、ヨルダン、シリアとの間で六日戦争、そして1973年、エジプトとシリアとの間でヨム・キプール戦争がありました。またガリラヤ平和作戦と呼ばれるレバノン内におけるPLOとの戦いもありましたし、第二次レバノン戦争は最近ありましたね。とにかくイスラエルは周辺アラブ諸国とのみ、戦争を交わしています。

 けれども、その中で着実にロシアの関与が強くなりました。六日戦争の時はソ連もアメリカも、世界大戦になるのを恐れて関与するのを控えましたが、ヨム・キプール戦争の時はシリア側に深く関わり、ロシア製の武器のみならず、ロシア軍の兵士も送ったのではないかと言われています。そのため、地中海に浮かぶアメリカの戦艦が警戒態勢に入り、核戦争の危機に陥りました。そして1982年のガリラヤ平和作戦では、イスラエル軍がレバノン内にロシアの武器を大量に発見し、最大の危機を回避したと言われています。

 4節をご覧ください、「わたしはあなたを引き回し、あなたのあごに鉤をかけ」とあります。ロシアがイスラエルを取り巻く環境の背後で、動き回る姿にそっくりです。私たちが知らなければいけないことは、この主語です。「わたしは」つまり主ご自身が、これらの動きをすべて支配されていることです。プーチンがエゼキエル書のゴグだとは断定しませんが、けれどもそれに似た極めて怪しい動きをしています。けれども、それらはみな主ご自身の支配の中にあり、ご自分の怒りを下されるため、主があえてそうされていることを覚えてください。

 そしてロシュ、マゴグの王と手を組むのは「ペルシヤ」すなわちイランです。ところで興味深いことに、このエゼキエル書38,39章は多くの注解書によると、文字通り受け止めるべきではなく、象徴的解釈をすべきだ、とのことです。なぜなら、全てがイスラエルから遠く離れた国々であり、彼らが連携するとは考えられない、という説明です。その通りです、人間的には想定外のことであり、歴史的にロシアとペルシヤが手を組んだことはありません。 

 けれども、最近その環境ががらりと変わりました。ロシアのプーチンとイランのアフマデネジャドが軍事的協定を結んだからです。プーチンも危ないですが、アフマデネジャドはもっと危ないです。ちょうどオウム真理教の麻原彰晃が、国の指導者になったとお考えください。オウム真理教が1997年に行なった地下鉄サリン事件は、日本中枢を牛耳っているユダヤ勢力に対抗するためだった、というのはご存知でしょうか。彼らの出版した書籍で、宇野正美や川尻徹等の書籍を文献にして、日本をユダヤが支配しているので、その政治中枢を殲滅しなければいけないと主張していたのです。サリンを散布して、それだけで日本のみならず世界を震撼させましたが、同じような過激で危険な思想、いや、思想ではなく「信仰」をアフマデネジャドは強固に抱いています。

 イランはちょうど30年前に急激に変わり、それが世界を変えました。そうです「イスラム革命」です。それまではアラブのテロリストと言っても、PLOなど革命社会主義的なものであり、宗教色はありませんでした。けれども、アラブ諸国がイスラエルとの戦争で連敗することによって、彼らはイスラム教への回帰に傾きました。それでシーア派の原理主義者らによる革命によって、イランはイスラム法に基づく国家を設立しました。けれども、ホメイニなどの指導層の中でも狂信的でオカルト的と言われていたグループの人々が、今、イランの政治を支配しています。

 ホメイニの目標はあくまでも、イスラム法に基づく国家を造り上げることでした。けれどもイランは何も変わっていない。これは自らが造り上げるのではなく、イマームの到来を待つべきだからである。イマームとはイスラム教シーア派の預言者であり、第十二番目は今隠されている、とのことです。彼が現れる前に世界には大混乱が起こり、そしてイスラムに敵対する勢力を排して、アッラーの国をこの地上に打ち立てる、という考えです。つまりイスラム・シーア派版のメシヤの再臨です。

 そしてアフマディネジャドは、「このイマームを消極的に待っているだけではだめだ。我々の力で、世界に混乱を引き起こせば、その到来を早めることができる。」と考えています。その手段が今、ニュースを騒がせている核開発です。

 そして先ほど言ったように、クシュはエチオピヤで当時はスーダンも含みました。スーダンはイスラム原理主義の国です。こうしてみると、アラブ人でつながっているのではなく「イスラム」でつながっている国々と見ることができます。

 そして「ゴメル」と「ベテ・トガルマ」ですが、今のトルコに位置すると言われます。ゴメルもまた、ヤペテの息子の一人です。ドイツ方面であるという意見もありますが、トルコの北部という人々もいます。トルコが非常に重要な国になることは間違いありません。トルコは穏健派イスラム国です。アメリカやイスラエルとも友好的な関係を結んでいます。しかし、トルコの重要性はそこがアジアとヨーロッパ、東洋と西洋を結ぶ分岐点だということです。その地域がどのように転がるかによって、そこの地域全体の勢力バランスが変わります。

 かつてオスマン・トルコ帝国がその地域一帯を支配しました。興味深いことに当時の地図を見ると、まさにこの章に出てくる国々を合わせたものとそっくりです。

 トルコはイスラエルとばかりでなく、イランとも友好関係です。この両勢力とのバランスの中で生きているのですが、最近は、イスラエルから徐々にイランの方に傾いています。最近トルコ首相がアフマディネジャドを訪問し、核開発計画を歓迎し、イスラエルをイランと共に非難しました。

 したがって、この東洋と西洋の狭間にある国は、西側から東側に移る可能性は大です。特に西洋においてダニエル書で預言されている復興ローマ、反キリストの台頭の動きがますます強くなりますから、トルコが西を離れ、ロシア・イランの連合に加わり、イスラエル攻撃に加担することは十分に考えられます。

2A 安心しているイスラエル 7−16
1B 終わりの日 7−9
38:7 備えをせよ。あなたも、あなたのところに集められた全集団も備えをせよ。あなたは彼らを監督せよ。38:8 多くの日が過ぎて、あなたは命令を受け、終わりの年に、一つの国に侵入する。その国は剣の災害から立ち直り、その民は多くの国々の民の中から集められ、久しく廃墟であったイスラエルの山々に住んでいる。その民は国々の民の中から連れ出され、彼らはみな安心して住んでいる38:9 あなたは、あらしのように攻め上り、あなたと、あなたの全部隊、それに、あなたにつく多くの国々の民は、地をおおう雲のようになる。

 イスラエルが安心して住んでいるときに、この突如の攻撃が始まると主は教えておられます。イスラエルが安全になる?と聞けば、みなさん非現実的だと感じられるかもしれません。ここで、そのような考えを変える必要があります。今の時代は、イスラエル・アラブ間の紛争から、さらに周辺にあるロシア、イラン、その他イスラム諸国のもっと遠いところにある脅威に移っているということです。これは、1948年の独立戦争が最もユダヤ人にとって被害が大きかったですが、それから徐々に安全を確保してきたことを知らなければなりません。

 アラブの国との国家間での戦いは、1973年のヨム・キプール戦争で実は終わりました。エジプトのサダト大統領が上手に戦争を終結させ、それを外交交渉の場に持ち込み、シナイ半島を奪還し、そしてイスラエルとの和平にまで持ち込んだからです。それが他のアラブ諸国にも波及しました。もう戦争ではイスラエルには決して勝てない、ということは嫌になるほど知っているので、国として戦うことはありません。その後の戦いは、PLOなどのゲリラ組織との戦いです。

 そしてこれらゲリラ組織も革命社会主義的なものから、イスラム主義に傾きました。レバノンにいるヒズボラはシーア派の原理主義者です。ガザ地区にいるハマスは、スンニ派の原理主義者です。イランはどちらも、特にシリアを通してヒズボラを支えています。

 2000年に起こった第二次インティファーダで自爆テロが多発しました。マスコミはいつも、イスラエルとパレスチナの紛争で、イスラエルは非常に危険な地域だと報じています。けれども実際にイスラエルに行ったことのある人は、それはごく一部の地域で起こっていることであり、ほんのちょっと気をつければ、本当に平穏なところであることを知ることができます。アラファトの死、そして分離フェンスのおかげで、自爆テロが激減しました。観光客も急増しています。

 そして2006年にレバノンにいるヒズボラとの戦いがあり、そしてちょうど去年、ハマスとの間のガザ戦争がありましたが、イスラエル空軍はハマスの拠点にかなり打撃を加えることができたので、これは成功したと言えます。

 だから、イスラエルに対する私たち一般の人たちの印象とは正反対に、当のイスラエル人たちは、建国以来最も安全を確保したと言って安心しているのです。確かに私たちが見れば、特に日本から行く人にとっては、レストランに行っても空港にいるかのようにセキュリティーチェックを受けるのですから、危険な国と感じるかもしれません。けれども、シオニズム運動が起こってから間もなくしてアラブ人の暴動に遭い、当時の人口の1パーセントを失った独立戦争があり、一連の中東戦争を経たイスラエル人にとって、以前と比べれば最も安全であると考えても全然おかしくありません。

2B 分捕り 10−13
38:10 神である主はこう仰せられる。その日には、あなたの心にさまざまな思いが浮かぶ。あなたは悪巧みを設け、38:11 こう言おう。『私は城壁のない町々の国に攻め上り、安心して住んでいる平和な国に侵入しよう。彼らはみな、城壁もかんぬきも門もない所に住んでいる。』38:12 あなたは物を分捕り、獲物をかすめ奪い、今は人の住むようになった廃墟や、国々から集められ、その国の中心に住み、家畜と財産を持っている民に向かって、あなたの腕力をふるおうとする。38:13 シェバやデダンやタルシシュの商人たち、およびそのすべての若い獅子たちは、あなたに聞こう。『あなたは物を分捕るために来たのか。獲物をかすめ奪うために集団を集め、銀や金を運び去り、家畜や財産を取り、大いに略奪をしようとするのか。』と。

 これが、マゴグの君ゴグと、それに連なる国々が、イスラエルを攻め上る動機です。豊かになったイスラエルを貪って、分捕りたいということなのです。

 イスラエルがいかに先進的で豊かな国であるかを、私たちは知らなければいけません。36章の学びの時に、世界有数の農業国であることを話しましたが、それ以上に死海から取れるミネラルを売り、そしてテルアビブを中心に先端技術が世界有数です。そして、イスラエル指導層さえ想像していなかったことが起こりました。イスラエルの中で石油が発掘されたことです。

 それから今、このような1929年の世界恐慌に匹敵する世界大不況の中で、イスラエルは景気が上向きです。今のネタニヤフ首相が財務大臣であったころ減税措置を断行し、経済を活性化させました。今のアメリカでは想像ができませんね。そして、今、一人当たりの所得が百万ドルの人たち、いわゆる億万長者が最も集まっているのがイスラエルなのです。アメリカではないそうです。

 したがって、イスラエルの豊かさを分捕りたいと思ってこれらの国々が攻め上ってきます。

 そしてここに、少し反対表明を出すけれども、この軍事攻撃には何の意味もなさない国々の声が紹介されています。まず「シェバやデダン」です。これは今のアラビア半島、サウジアラビアになります。彼らは石油産出国ですから、その地域の安定化を最も願うわけで、このような動きに反対するわけです。

 そして次に「タルシシュの商人」とあります。ツロに対する預言の中で、その貿易で活躍しているのがタルシシュの船です。今のスペインにあるとされます。そして興味深いのが「そのすべての若い獅子たち」という言葉です。ここの「若い獅子」は「植民地」と訳すこともできます。アメリカ大陸を発見したのが、そうこのタルシシュ出身のコロンブスです。

 アメリカ合衆国がこれだけ世界の超大国なのに、なぜ聖書預言の中に出てこないのか、特にイスラエルを支援する数少ない国なのに、なぜ?と思われるかもしれません。けれども、アメリカはやはり出てこない、あえて言うならば、ここにちょこっと出てきているかもしれない、です。アメリカは弱くなります。そのユダヤ・キリスト教の伝統と価値観によってこの国は強かったのですが、それを捨ててしまった今、その地域に対してほとんど力を持たなくなるというのが考えられるシナリオです。

 アメリカがどのようにイスラエルを支持したのか、その歴史を知ることは大切です。決して一枚岩ではありませんでした。イスラエルの独立の時から始まり、政府内では熾烈な駆け引きがありました。特に国務省はアラブ寄りであり、大統領とは対立していたのです。大統領は大きく逡巡し、悩み、それでも寸分のところでイスラエルを支持してきたのが現状なのです。

 だから大統領のために祈ることは、大きな意味があります。けれども今、イスラム諸国には自分はイスラム教徒だと言っている人が大統領になり、就任式では、キリスト教の牧師が、イスラム教の神とキリスト教の神をいっしょくたにして祈ったのです。でも私たちは、アメリカのために生きているのではありません。神の国のために生きています。どの国でも暗い部分があります。けれども、だからこそ神の国の市民として、この国で光として輝くことができるのです。祈りに、そして福音宣教にぜひ励んでください。

3B 地を覆う雲 14−16
38:14 それゆえ、人の子よ、預言してゴグに言え。神である主はこう仰せられる。わたしの民イスラエルが安心して住んでいるとき、実に、その日、あなたは奮い立つのだ。38:15 あなたは、北の果てのあなたの国から、多くの国々の民を率いて来る。彼らはみな馬に乗る者で、大集団、大軍勢だ。38:16 あなたは、わたしの民イスラエルを攻めに上り、終わりの日に、あなたは地をおおう雲のようになる。ゴグよ。わたしはあなたに、わたしの地を攻めさせる。それは、わたしがあなたを使って諸国の民の目の前にわたしの聖なることを示し、彼らがわたしを知るためだ。

 主はこれらのことを行なわれるご自分の目的を、強調されています。「わたしの聖なることを示し、彼らがわたしを知るためだ。」です。イスラエルが安心して住んでいるとき、と強調しておられます。なぜか?彼らが安心して住んでいるので、主を見上げることをしていないからです。

 ちょうどこれは、イスラエルの民がエジプトをようやく出ることができたけれども、少し引き返し、紅海のほとりにあるところで宿営させ、あえてパロの心を再びかたくなにさせ、イスラエル人を奪いとるようにさせたのと似ています。単にエジプトを出て行くだけではわからない神の栄光を、危機一髪の状態をあえてこしらえて、そこからイスラエルを救われることによって、ご自分が主であることを示されるのです。

 イスラエルの人々に、私たちが驚く、彼らの身に起こった数々の奇跡を話してください。そのほとんどが、「私たちの努力と智恵によって」と答えます。自分たちの力に誇りを抱いています。だから、イスラエルが決して自分たちの力ではどうしようもできないように、神があえてされるのです。

 私たちも同じでしょう。私たちの周りに起こる騒ぎ、これまで頼っていたものがなくなった、など、それらは主が行なわれていることなのです。私たちが力を尽くして主を求め、主に拠り頼むようにするためです。

3A 神の怒り 17−23
38:17 神である主はこう仰せられる。あなたは、わたしが昔、わたしのしもべ、イスラエルの預言者たちを通して語った当の者ではないか。この預言者たちは、わたしがあなたに彼らを攻めさせると、長年にわたり預言していたのだ。

 聖書の預言の中には、ゴグに対する預言はここだけです。けれども、ゴグが行なおうとしている原型は至るところで見ることができます。先ほど話した出エジプトもそうですし、そして数々の預言者が、イスラエルが多くの国々に取り囲まれて、攻められようとしているところを主が救い出してくださることを約束したことを見ることができます。

38:18 ゴグがイスラエルの地を攻めるその日、・・神である主の御告げ。・・わたしは怒りを燃え上がらせる。38:19 わたしは、ねたみと激しい怒りの火を吹きつけて言う。その日には必ずイスラエルの地に大きな地震が起こる。38:20 海の魚も、空の鳥も、野の獣も、地面をはうすべてのものも、地上のすべての人間も、わたしの前で震え上がり、山々はくつがえり、がけは落ち、すべての城壁は地に倒れる。

 主がご自分の怒りをゴグに対して現されます。まずは地震を通してです。

38:21 わたしは剣を呼び寄せて、わたしのすべての山々でゴグを攻めさせる。・・神である主の御告げ。・・彼らは剣で同士打ちをするようになる。

 地震だけではなく、同士打ちによっても彼らを滅ぼされます。イスラエル人が戦ったなかで、主がこのことを数多くなされました。例えば、ギデオンが300人の仲間とともにミデヤン人と戦った時、同士打ちがありました。今日でも、アラブが行なう戦争を見れば、必ずと言ってよいほど団結できず、しばしば互いに殺し合います。ゴグはアラブではないですが、同じことを主は行なわれます。

38:22 わたしは疫病と流血で彼に罰を下し、彼と、彼の部隊と、彼の率いる多くの国々の民の上に、豪雨や雹や火や硫黄を降り注がせる。

 エジプトに対する災いやソドムとゴモラを思い出しますね。疫病と流血。そして雹や火です。

38:23 わたしがわたしの大いなることを示し、わたしの聖なることを示して、多くの国々の見ている前で、わたしを知らせるとき、彼らは、わたしが主であることを知ろう。」

 神はこのことを、全世界にご自分を知らしめる出来事として行なわれます。本当に今、全世界がイエス・キリストがまことの神であり主であることを認めているのでしょうか。もちろん違います。そしてキリストを信じないこの世界に対して、教会が信じるように真理を妥協してよいでしょうか。いいえ、違います。この世を教会に引き寄せようとして、教会がこの世に引き寄せられているのが現状です。 

 私たちが伝道のために、宣教のためにこの世に調子を合わせなくて良いのです。引き寄せるのは主がしてくださいます。終わりの日、これは今の時代も指していますが、終わりの日には、主がこのようなイスラエルをゴグの敵から救い出される目覚しい奇跡を行なってくださいます。主が、ご自分が聖なることを示し、彼らがこの方が主であることを知るようにしてくださるのです。


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