「ケース・フォー・イスラエル」

まだすべてを読み終わっていないのですが、一冊、本を紹介します。

「ケース・フォー・イスラエル」アラン・ダーショウィッツ著

出版社はイスラエル・ユダヤ関連で良質の本を出し続けている「ミルトス」です。リンク先のページで目次を読むことができます。そして、書評として「スギハラ・ダラー」の著者手嶋龍一氏による書評を紹介しています。内容はこちらで把握していただければ、と思います。

そして販売先として、本書を推薦している中川健一師の「ハーベスト・タイム」でも購入できます。

私は、邦訳が出る前にこの本の存在を知っていました。紹介サイトThe Case For Israel – Democracy’s Outpostがありますが、書籍の他、DVDなども発売されています。私は本書の内容はすばらしいと思ったものの、著者本人には良い印象を持っていませんでした。いわゆる「リベラル派」の代表的弁護士だからです。かつては猥褻雑誌の擁護、同性愛者の権利拡大を始め、キリスト者で保守的な考えを持っている人ならば、目の敵にするような人物です。

けれどもこの点が味噌で、その超リベラル派のアラン・ダーショウィッツ氏がイスラエルのケース(主張)を擁護しているのです。なぜか?イスラエルは世俗民主主義国家として、高い水準を維持しているからです。同じ価値観に照らし合わせて、イスラエルが、周囲の中東諸国はもっての他、欧米諸国の基準に照らし合わせても優れた点を持っています。

したがって、「世の中でイスラエルを擁護するのは、アメリカの福音派のような狂信者しかいない。」という非難は、現状に照らし合わせていかに間違っているかを暴露しています。同時に、キリスト教界を含めて、人権を重視することを主張してイスラエルを非難するのは、いかにとんでもない間違いを犯しているかもよく理解できるかと思います。

簡単に言えば、「別に宗教的にならなくても、世間常識で考えて、イスラエルのしていることの多くを擁護できる。」ということです。

イスラエルの中にいる人たちにも、イスラエル政策について右から左まで幅広くあります。リクード党(右派)、カディマ党(中道)、労働党(左派)などいろいろありますが、その間で激しく意見がぶつかり合うものの、常識として一致して持っている共通事項があります。ダーショウィッツ氏は左派の考えと同じです。そのため、私は同意できない点がいくつかありますが、それでも彼の主張は、そんな議論以前の、人間であれば当たり前の価値観を提示しており、それゆえ十分に推薦できる本です。

以前紹介した「イスラエル全史」(マーティン・ギルバート著)もイスラエル左派に同情的な歴史家によって書かれたもので、これも同意できない点があるものの、イスラエルの国の全体を知りたい方には、誰にもお勧めします。

なので、ダーショウィィッツ氏もイスラエル個々の政策に対する批判を手厳しく行いますが、共通認識から大きく逸脱している非難に対しては別問題であるとし、強く反発します。私もかつて、「イスラエルを批判するとすぐに反ユダヤ主義者のレッテルを貼る。」という批判を受けましたが、手嶋氏が書評で言及しているように、単にイスラエル批判をしているのと、イスラエルそのものの存在またユダヤ人の存在を否定する反ユダヤ主義とは別物で、往々にして後者の場合が多いのです。

ちょうど日本の人たちに分かりやすく話すなら、「日本の対北朝鮮政策」が良い例でしょう。どんなに左派の人であっても、今、あの国が自国民に対して行っていることを同意することは決してないでしょう。事実、右寄りの言論人だけでなく、左寄りのジャーナリストが北朝鮮の内情や人権問題を取り扱い、いかなる懐柔策に対しても強く反発しています(例えば、高世仁氏石丸次郎氏)。

そして、これまでのイスラエルとパレスチナの関係、特に難民問題を取り扱う時に、アメリカでは定着している暴露本が邦訳されています。

「ユダヤ人は有史以来」(ジョーン・ピーターズ著)<上><下>

少しずつですが、こういう書籍が増えることが願ってやみません。訳者の滝本義人氏は数々の良書を翻訳されている方ですが、マイケル・オレン氏の”Six Days of War“をぜひ翻訳していただきたいです・・・とリクエストを、ささやかながら、おかけしたいと思います。

最後に、聖書的に、霊的にお話したいと思います。私は今のイスラエルに批判的になるときは、一つは、その「世俗化」であり、もう一つは、その「宗教性」です。前者は、道徳的に退廃している若者の姿を見ると罪からの救いを祈らざるを得ません。後者は、超正統派などによる信者に対する迫害です。これは、かつて主ご自身や使徒たちを迫害したユダヤ指導者と変わりない罪を犯しています。彼らの中にもニコデモのように真の信仰に目覚める人が出てくることを願ってやみません。

その他の事項について、イスラエルという国、そしてユダヤ人の世界を見ると、私は選ばれた民であり、神が目を留めておられる奇跡の国であることに驚かざるを得ません。私は、「聖書は絶対に正しい」ということを、彼らのこれまでの歩みと今の動きを見て、その信念が強くされていきます。

ベン・グリオン(左派で、宗教的ではなかった)は、「イスラエルで、奇跡を信じないものは現実主義者ではない。」と言いました。彼らは、聖書が教えている奇跡を実体化させているのに、彼ら自身が聖書の神を信じていない、という矛盾を抱えています。

米国系ユダヤ人であるダーショウィッツ氏も、「この不可解な問題に対する答えを探し求める過程で、暗黒の力が作用していることが、次第に明らかにあった。短期間の内に、世論の認識が劇的に変わってしまうのは、論理的、倫理的、法的いや政治的原則からは、説明できないからである(20頁)」と言っています。中川師も指摘していますが、リベラルの弁護士が「暗黒の力」という霊的説明を行っているのです!

選ばれた民ユダヤ人が救われることを願ってやみません。今、アメリカとイスラエルで、イエス様を信じる人が急増していることは、良い知らせであり、また主のご再臨の前触れです。