パレスチナ国家独立について

中東情勢について、今、忘れてはいけないのは、パレスチナ自治政府が9月20日に「パレスチナ独立国家」の承認を国連に求める問題です。すでに、「NHKの偏向報道」において触れましたが極めて非現実的な試みであります。

ハーベストタイムのメールマガジンの最新号でも、このことを指摘しています。

パレスチナの独立国家建設

私が以前指摘していたのとほぼ同じことを述べています。

(1)パレスチナ側は、独立国家になる準備がまだできていない。特に、テロの完全放棄が為されていない現状で、国際社会がその正当性を認めるなら、将来に禍根を残すことになる。
(2)ハマスとファタハの権力闘争が依然として続いており、平和的に国家運営を行える状態にはなっていない。
(3)国家運営に必要な経済基盤は、国際社会からの援助金である。また、経済活動の面でも、イスラエル経済に全面的に依存している。
(4)パレスチナ国家の独立に強硬に反対する声が、パレスチナ人自身の中にある。反対の理由は、パレスチナ国家の独立を宣言することは、イスラエル国家の存在を認めることになるからだという。

そして、イスラエルからのメールとして、承認されるか、されないかに関わらず、暴動や新たなインティファーダが起こる可能性が高いということです。

もう一つ紹介したいのは、「パレスチナ世論調査の結果は非平和的」という記事です。

たとえば、パレスチナ人に向けた『ニ国家解決案』については、34パーセントが賛成と答えながらも、それはワンステップであり、最終的にはパレスチナ国家だけが、残るというものだった。
 エルサレム市については、92パーセントがパレスチナの首都であるべきだと答え、1パーセントがイスラエルの首都、3パーセントが両国の首都、4パーセントが国際都市と答えている。
 イスラエルのエルサレムに関する歴史についても、72パーセントが嘘だとし、62パーセントが人質を支持し、53パーセントが学校で子供たちに、反イスラエルの歌を、教えることを支持している。
 イスラエルを打倒するためには、80パーセントがアラブとイスラム諸国から支援を受ける必要があるとし、73パーセントがユダヤ人を殺す必要があるとしている。
 そして、パレスチナ問題の解決には45パーセントが、ジハード(聖戦)が必要だとしている。パレスチナ人は65パーセントが交渉によって、問題を解決すべきだとし、20パーセントが戦いによって、解決するべきだとしている。

これは、イスラエル情勢を見てきている人々にとっては、ずっと前から分かっている結果ですが、イスラエルが強硬なのではなく、むしろパレスチナが強硬なのです。しかし、こうした内部の現実があったとしても、ネタニヤフ首相が、「ユダヤ人国家を認める、ということだけを言ってほしい。」と、二国案に対してアッバス首相に訴えて、譲歩しているのです。(後記:アッバス議長は明確に、『私はユダヤ人国家を承認しない。』と言いました。二国案ではなく、相変わらず一国案(ユダヤ人を追い出しすべてをパレスチナ国家にする)なのです!)

けれども、この対面式世論調査は興味深い側面を見せています。

 国連によるパレスチナ国家の承認については、64パーセントが賛成しており、そのうちの57パーセントが、ヨルダン川西岸地区住民、ガザ住民の間では、79パーセントが支持している。
 その結果として、国連への働き掛けが、パレスチナ国家を実現する、と考えている人たちが37パーセント、16パーセントが逆効果、44パーセントは何の変化も無いと考えている。
 マハムード・アッバース議長に対する要望では、83パーセントが雇用機会の創出、国連承認が4パーセント、2パーセントが和平交渉の継続、ということだ。

 国連への働き掛けに対して一番多いのは「何の変化もない」であり、盛り上げてはいるものの、現実はそう甘くないということも心得ているようです。そしてもっと切実な問題は、国連承認よりも「仕事をくれ!」ということであり、これが私にとって、民族的誇りにまさる現実的訴えであると考えています。

明日の飯が一番気になる

 ベイルート通信というサイトの記者の人も「イスラエル」と「パレスチナ」の対立をこう説明しています。

世にいう「イスラエルとパレスチナの対立」です。
 メディアに頻出するこのキャッチフレーズのおかげで、イスラエル人とパレスチナ人は不倶戴天の仇敵であるかのような印象を抱く人は少なくないでしょう。
 しかし、いわゆるイスラエル人=イスラエル国籍保有者のうち、およそ5人に1人は「イスラエル・アラブ」、つまりユダヤ人ではなく、パレスチナ・アラブ人なのです。
 さらにこの「イスラエル・アラブ人」の中には、ドルーズ教徒や一部のベドウィンのように、イスラエル建国以来、イスラエルの兵役にすすんで参加し、他の「イスラエル・アラブ」と対立する人々も居ます。

 また、ヨルダン川西岸地区にあるイスラエル入植地の問題があります。
この入植地のほとんどは、1967年の占領後に、物理的にイスラエルが領土的妥協出来ないように、つまり占領地領有の既成事実をつくるために、政策的に建設されたものです。
 従って、「入植地は和平の障害」という表現は正しいと言えるでしょう。
 ただ、同時に、イスラエルの封鎖政策によって収入源を断たれた西岸地区住民にとって、皮肉なことに入植地での労働が貴重な雇用機会になってしまっているのも事実なのです。

 「イスラエルとパレスチナの対立」という図式や表現にこだわると、見落としてしまう点がたくさん出てくることが理解していただけると思います。

「イスラエル残滅!」と叫んでいるハマス支持者が、次の日にはユダヤ人の入植地住宅建設の仕事に出かける、ということは、彼らの頭の中では矛盾なく行なわれている事でしょう。また、イスラエル国籍を持っているアラブ人で、パレスチナ国家設立後、国籍を変えようと思っている人はほぼ皆無だと聞いています。理由は、「仕事がないから」あるいは「生活水準が一気に落ちるから」です。

いずれにしても、国連承認前後のインティファーダは第二次の結果を見てのとおり、イスラエルのみならずパレスチナにとっても酷い禍根を残すでしょう。主の憐れみによって、そのような暴挙に出ないよう祈るのみです。

「パレスチナ国家独立について」への2件のフィードバック

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