ヒトラーに見る「私たち」の悪

今日は、ホロコーストを記憶する日だそうです。

今日1月27日は、ホロコースト犠牲者を想起する国際デー。わずか70年ほど前に実際に起きた、この大きな悲劇を記憶にとどめ、後世に伝えていくという目的の下に2005年の国連総会で制定されました。1945年のこの日、当時ナチス・ドイツによ…

Posted by イスラエル大使館 / Israel in Japan on 2016年1月26日

なぜ、人間がこんな悪を行なうことができるのか?この問いは、実にイスラム教のテロ等によって今にまで続いている問いかけです。先日、妻といっしょに次のNHKスペシャルを見て、心が揺さぶられました。

NHKスペシャル <新・映像の世紀> 第3集 「時代は独裁者を求めた」
hitler

経済の安定という偽りの救い

映像の中に出てくるヒトラーですが、この悪の権化だと言われる人物がこれほどまでに身近に感じたことはありません。子煩悩である彼の映像から始まり、経済的窮地に陥っていたドイツを、大胆な経済政策によって、一般庶民から押し上げるように救出させた姿。世界は経済恐慌であえぐ中で、ドイツは比較的安定した経済を維持していたこと。そんな中、反ユダヤ主義政策を打ち出すも、ドイツ人は変だと思っても、「でも生活が良くなったから」ということで、知って知らぬふり。熱狂的な支持の中で、彼の政策が推進していたこと。どれもこれもが、今の時代にも重なる部分が多すぎます。

まさに、私たちの心の中に「一時的な安寧や快適さ、また周囲への無関心」を抱いている、そのちょっとした心の悪の集積が、独裁者の出現へとそのままつながっているということ。これが恐ろしかったです。そしてヒトラーを連合軍はベルリン空爆で追い込み、彼は自殺しますが、最後に言った言葉が震えました。

ナチズムは壊滅した、もう終わりだ。その思想は私と共に消滅する。だが100年後には新たな思想が生まれるだろう。宗教のように新たなナチズムが誕生するだろう。

100年後と言えば2045年、あと29年後です。

生活の安定の中に潜む悪への好奇心

もう一つ衝撃的だったのは、今でこそナチズムを嫌悪し、過去は連合軍として激しく戦ったアメリカが、ナチズムに限りなく近づいたという経歴です。実に、ヒトラーが反ユダヤ主義を抱いたのは、あの自動車王、ヘンリー・フォードが反ユダヤ主義を広め、それに感化されたからだという事実。多くのアメリカの著名人が、ヒトラーに傾倒している様子。アメリカの企業が、ドイツの兵器開発を自分たちの会社の利益だけ考えて手伝っている様子。日本が枢軸国としてナチスに協力したわけですが、彼らは戦勝国だからこそ問われない、この闇があります。そして今も、イランの核兵器開発を大きく許容し、欧米の企業がこぞってイランと手を結んでいる様子とも重なりました。

そして、私は「平和的中立」の悪も見ました。アメリカは、ずっとヒトラーによるヨーロッパ侵略に関与しませんでした。中立を装っていますが、国内では親ナチスの政治団体まであり、悪を許していた。そこにあるのは、「自分たちの平穏、経済的安定を壊されたくない。」という、自己中心的な思いがあったからです。そこに日本軍による真珠湾攻撃がありました。アメリカは、これによって初めてヨーロッパ戦線に加わるようになります。

その反面、一度、戦争に関わると、留まることを知らなくなります。その正義感はいつしか憎悪へとも変わってきます。その姿もえぐり出しています。

全てが、自分自身、周りの社会、我が国、日本にも降りかかってきます。人間にある悪、心に沈殿しているものが、何かのきっかけで全体を汚し、それが国として、世界的に露わにされる、そんな感じがしました。

ヒトラーこそ反キリストの近現代の原型

私は教会の仲間に、「いつか、この映像をいっしょに鑑賞してもいいかもしれない。」と話しました。なぜかというと、元旦礼拝で世の終わりについての説教をし、そこで荒らす憎むべき者である反キリストを取り扱ったからです。反キリストの原型として、ギリシヤの王アンティオコス・エピファネスがいますが、彼だけでなく、歴史上にはその前兆であるかのような、類似した人物が出てきました。その最も似通った典型がアドルフ・ヒトラーだからです。

この王は、思いのままにふるまい、すべての神よりも自分を高め、大いなるものとし、神の神に向かってあきれ果てるようなことを語り、憤りが終わるまで栄える。定められていることが、なされるからである。彼は、先祖の神々を心にかけず、女たちの慕うものも、どんな神々も心にかけない。すべてにまさって自分を大きいものとするからだ。その代わりに、彼はとりでの神をあがめ、金、銀、宝石、宝物で、彼の先祖たちの知らなかった神をあがめる。彼は外国の神の助けによって、城壁のあるとりでを取り、彼が認める者には、栄誉を増し加え、多くのものを治めさせ、代価として国土を分け与える。 (ダニエル書11:36-39)」

地政学的にも、そうでした。彼はヨーロッパから出現、北アフリカまで戦線を伸ばしましたが、反キリストは復興ローマから出現、エジプト、リビア、エチオピヤなど北アフリカまで足を延ばします。そして反ユダヤ主義にかけては、彼は何とかしてユダヤ人を滅ぼすべく、躍起になります。そして、西方教会はカトリックもプロテスタントも一部を除いてヒトラーに迎合します。これもまた、外国の神の助けを借りる反キリストの姿に似ています。ヒトラーにこそ、近代の反キリストの予型があります。

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