国連安保理、イスラエル非難決議を採択 米国棄権 ③

シルバートランペットから

昨日は、夜更かしに加えて、ジョン・ケリー米国務長官の、国連安保理2334号の米国の棄権についての説明を、ライブで聞いてしまいました。そして、ネタニヤフ首相のジョン・ケリー氏の説明に対するコメントを聞きました。

感想は、「なんだこりゃ?凄いことになっている。」であります。日米首脳の真珠湾における演説とは対照的に、これまでおそらく裏舞台で展開されていた激しいやり取りを、表に出してやってしまっている、もっとはっきり言うなら、「兄弟げんかのいがみ合い」を表舞台でやってしまっている!という感じです。

オバマ大統領も、ケリー国務長官も、英語はきれいで、上手に話しています。けれどもその言っていることは、イスラエルに対してまるで、自らが宗主国であるかのように話している。そして口調も強く高圧的です。ネタニヤフ首相が、「イスラエルとパレスチナの和平についての授業を、外国から聞く必要はありません。」と言っていますが、その通りです。私も日本の安全保障について米政府からこんな口調で言われたら、ものすごい憤慨するでしょう。

今回の国連安保理2334号を今、読み直したのですが、やはりトンデモです。六日戦争直後の242号は、占領軍(イスラエル軍のこと)の撤退を銘記していますが、どの領域から撤退なのかについては明確に定めていません。しかし2334号は、はっきりと六日戦争の休戦ラインにし、それを国際法において違法であると銘記しています。これは、やばいのです。中東地域で「曖昧」というのはものすごく大事です。あの小さな土地でユダヤ人とアラブ人が入り組んで住んでいるのですから、近代法はあまり意味をなさない部分があります。それをごり押しで、”きれい”に線引きするものなら、さらなる紛争を呼び起こすことは目に見えています。

近現代法やリベラルの価値観を神聖化し、振りかざすと、どこでもそうですが、必ずそこの歴史や文化を破壊します。日本や世界に、オバマ政権が同性愛権利拡充を推進してきたのに、それがよく見えています。従来のオカマ文化が日本にはあったのですが、「人権」という名の下で異質な価値観が日本に入り込んでいます。それはまるで、ハロウィーンがいつの間にか日本社会に導入されているのと似ています。

それとイスラエルは同じです。聖書というのは、古代の最も信憑性のある歴史書でもあり、また遺跡でも証明されており、東エルサレムがユダヤ人の都であったことは紛れもない事実なのです。ネタニヤフ氏のFBには、オバマ氏が大統領候補だった時、嘆きの壁で祈っている写真を掲げ、それから「ここが占領されたパレスチナだということです。」という皮肉のコメントを入れています。「嘆きの壁」や「ユダヤ人地区」が、全て「イスラエルに占領されたパレスチナの地」なのですから、こんな滑稽な話、茶番はないのです。

しかも、イスラエルがそこをヨルダンから奪取した時は、東エルサレムのムスリム地区やその他のアラブ人の居住区を破壊したり、その住民を追放したりしたことはありません。いろいろな法的、社会的な面で、不平等になっている現実がありますが、物理的に破壊、追放はしていません。イスラム教とキリスト教はそのまま残っています。しかしヨルダンがそこを占領していた時は、シナゴーグが全て破壊されました。ユダヤ人も全然いませんでした。ここが大きな違いなのです。

ヨルダン国王アブドラ二世は、とても寛容な人であり、キリスト教をとても敬う一方で、一切、ユダヤ教については話しません。神殿の丘がユダヤ教につながりがあることを、国連総会の演説で完全否定していました。けれども裏では現実を知っている人で、水面下でイスラエルと密接な連絡や協議、連絡をしています。ここが、アラブ人というか、良識あるアラブ元首のすることであり、この微妙な立ち位置を尊重しないといけないのです。そのまま、イスラム教の主張を近現代の価値観で容認してしまったら、トンデモはっぷん、なのです。

パレスチナ側も、自分たちの政治的主張のために、いろんなことを言っていて、「全部オリジナルが私たちのものだ」と、イスラエルの置き換えをしていることは、よく知られています。けれども、彼らの訴えはそういった言辞そのものではなく、他のところにあります。その言葉に表れていない叫びを聞き取らないといけないのですが、字義通り、取ってはいけないのです。それをやっているのが、オバマ政権です。これが単なる左翼の活動家が叫んでいることなら、「まあ、そういう見方もあるでしょう。」でいいのですが、主権国家がこぞって、しかも超大国の米国がそれをやったら、おしまいなのです。

そもそも、中東戦争というのは、「アラブ諸国の非妥協」→「戦争行為」→「イスラエルの防衛」→「イスラエルの領土拡大」の道をたどってきました。ですから、防衛戦争で勝ったのですから、基本的にイスラエルがそこをどうしようと、本来、勝手なのです。けれども後々の平和のために寛容を示すことは大事で、例えば日本で言うなら米国は占領した沖縄を返還しました。イスラエルは、その姿勢をエジプトまたヨルダンに対して取りました。この両国は戦争をすればするほど、領土がなくなることを現実として体験し、それで外交という場でできるだけ有利に立つ道を選んだのです。それで「平和条約」を結ぶに至り、とても良い関係が続いています。民衆の気持ちは依然、反イスラエルでありますが、けれども為政者の権力が強いので、軍事的、政治的には平和が保たれています。

問題は、その対立の中で、おこぼれになった、宙ぶらりんになって住んでいたパレスチナ・アラブ人なのです。イスラエルが戦ったのは、「ヨルダン」と「エジプト」という主権国です。そしてそこの土地はどちらも「ヨルダン(西岸)」「エジプト(ガザ)」の占領地であって、彼らは戦争で敗けたので放棄しました。だから、そこに住民を代表する機関や組織がない。けれども、ゲリラ組織PLOが世渡りをしていました。その人民闘争を掲げるテロリスト集団しかその地域を代表する者たちはいなかったのですが、それでも、彼らを軟化させ、イスラエルも痛みをもって譲歩して結ばれたのが「オスロ合意」です。テロリストだったのですが、今は、パレスチナ自治政府の中核を担っています。

そこで法的に拘束されているのは、「バルフォア宣言」のみです。そこがユダヤ人の民族郷土として宣言されました。けれども国連によるパレスチナ分割の国連決議が出され、そこをさらに分割することになりました。パレスチナ・ユダヤ側はそれを飲みました。アラブ側が一切拒否。それで周辺アラブ諸国が一斉に独立宣言直後に攻めてきた、というのが流れです。ですから、現代に至るまで法的には、そこはユダヤ人の土地なのです。ですから、国連総会でアッバス議長が、「英国はバルフォア宣言を出したことを、謝罪するべきだ。」と、滑稽に聞こえますが、一理ある主張をしたのです。

Top Senate Democrat mocks Kerry after keynote Israel speech

この記事は、民主党の上院のトップチャック・シューマー氏が、ケリー国務長官のスピーチを、厳しく批判したものを伝えたものです。入植地の拡大が紛争の根源というのであれば、イスラエルがガザから完全撤退した後に、ガザからロケットが飛んできたということを無視している、と言っています。

そして、「今回の棄権は、イスラエルとパレスチナの過激派をさらに勇気づけた。」とのことです。イスラエルの極右が、これでさらに入植地を推進するでしょうし、パレスチナの過激派がどんどんテロを起こしていくだろう、ということ。私もそう思います。

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